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フェティッシュの火曜日
 
ヤンキーになって、書を捨て町へ出よう


探さなくていい方の自分探し。

元デイリーポータルZライターの神田ぱんさん宅へ荷物の受け取りへ行こうと思ったら、「その日はヤンキー大会だから、ヤンキーの格好をしてくるといいよ!」といわれた。

どうも誰かが新しい化粧品を買ったのでヤンキーメイクをしてみたら(なぜだ)、それが思いのほか楽しかったので、みんなで集まってやろうという話になったらしい。

これまでヤンキーの格好をしようと思ったことはないけれど、やってみないかといわれると、やってみたいような気もする。

開ける必要のない好奇心の扉がカチャリと開いた。

玉置 豊



ヤンキー的な服を買いに行く

大会当日、ヤンキー的な衣装を買うために、近所のファッションセンターしまむらという店にやってきた。

しまむらは日本国内になんと1140店舗(2009.8.6現在)もある、ヤンキーの座右の銘ともいえる全国制覇を果たしたファッション界の広域グループである。


ユニクロとは一味も二味も違った幅広いラインナップが頼もしい。それがしまむら。 明確な目的意識がなければ手に取ることがなかったであろうシャツを購入。500円。

友人から「しまむらにいけばどうにかなる」といわれてやってきたのだが、なるほど確かにどうにかなるようだ。

本当はビシっと変形学生服を用意したいところだが、そこまで力を入れるような大会でもあるまい。そこまで用意して行ったら、やりすぎだよと参加メンバーに笑われてしまいそうだ。

 

熱心にヤンキーメイクをする女性陣

午後二時という健康的な集合時間に会場である神田さん宅に到着。下は24歳から、上はその倍くらいの幅広い年齢層の女性陣5人が、真剣に「それぞれが思い描くヤンキーメイク」に没頭していた。みんな予想以上の本気っぷりである。


ナチュラルメイクの上からヤンキーメイクを重ねる女性陣。 「ヤンキーって内巻き?」「やっぱり外巻きじゃね?」

当日残念ながら何名かキャンセルがでてしまい、結果として男の参加が私一人になってしまい、「おお、ハーレム!」と一瞬思ったが、女性陣は私の存在などないもののように、本来は決して見せないであろう化粧姿を堂々とさらしている。眼中にねえっていうやつか。

部屋の中は不良が集まっている女子高の放課後、いや開店前の大衆キャバレーのような雰囲気がすっかりできあがっていた。夏らしく肝試し大会の控え室とたとえてもいいだろう。


猫にもヤンキーの恰好をさせようかと思ったが、それをやると「なめ猫」ですね。

 

眉毛を消したい

女性陣の普段みられない化粧姿を眺めていたら、「あんたもヤンキーなんだからその太いまゆ毛をどうにかしなさい」といわれてしまった。

なるほど、女装の肝はひげ隠しとよくいうが、ヤンキーになるなら眉毛を隠さねばなるまい。細い眉こそヤンキーの証。女性陣もみんな眉毛を消すのに躍起になっている。

じゃあせっかくだから私もと、コンシーラーという本来はシミを隠す化粧品を借りて、モサモサした眉毛に塗りたくってみた。


眉毛、消えてますかね。

これが全く消えてくれない。眉毛の細い人ではなく、眉毛の色が薄い人みたいになってしまった。これでは仲間外れにされてしまう。

こんなどうでもいいけど絶望的な状況を助けてくれるのがデイリーポータルZ。ライター小柳さんが前に書かれた「最も眉毛の消える絆創膏はどれか」という記事を思い出し、財布に入っていた絆創膏を右の眉毛に貼ってみた。


これでどうでしょう。

あれほど繁栄を誇っていた眉毛が一瞬にして不毛の砂漠に。この顔ならヤンキー的な格好をしても不自然ではあるまい。

ただ残念なのは、財布の中に絆創膏が一つしか入っていなかったことである。片眉だとヤンキーというよりは、「眉毛が生え揃うまで山から下りるまいと決心して山籠りに向かった空手家」みたいだ。


フラッシュを炊くとボクシングの試合翌日みたいでもある。

 

集合写真を撮ってみた

ヤンキーメイクというよりは、残念ながら夜のお仕事の準備みたいだった女性陣だが、それぞれが持ち寄った衣装を着ることで、見事にヤンキーとしての徒花(あだばな)が開花した。

場所をベランダに移して撮影した写真がこれだ。


「クローズ」とか「ルーキーズ」には出てこない方のヤンキー達。天然パーマは短髪だとパンチパーマに見えなくもない。

アロハシャツを着た先輩ヤンキー2名とその後輩2名。そして呼び出された運転手(車はシャコタンのハイエース)というところだろうか。

写真を撮った時は「俺ってヤンキー!」と思ったのだが、今こうして写真を見ると、片眉なのは置いておいて、あのズボンはないだろうと思った。新しく買うのをケチって手持ちのジャージですませようとしたのが悪かった。ヤンキーは膝が出るズボンを履いたらだめだ。

写真の右から二人目のねえさんなんて、この日のために古着屋をまわって本物のセーラー服を手に入れてきているのだ。やっぱりヤンキーは「気合い」だよなと思った。

そこに神田さんと同じくデイリーポータルZライターであった土屋遊さんを迎えての1枚。


やりすぎはよくないと私が避けた学生服を選んだのが二名もいたよ。左から二人目の土屋さんのセーラー服はパーティーグッズの偽物だけど、にじみ出る貫録がその安っぽさを包み込む。「あたい」とかいいそう。

ヤンキー顔を作ろうとすればするほど、みんなの顔が笑顔になるという反比例の法則。 一応様子を見に来たけれど、近づこうとはしない猫。

普段あんまり記念写真みたいなものはとらないのだが、こういう格好をするとつい何枚も撮ってしまう。ちなみに皆さん、元非ヤンキーの方だそうです。

世の中にはいろいろな趣味の方々がいるけれど、それがどんな趣味であろうと、それを好きになる理由や、そこから得られる喜びがあるのだろうなと、ヤンキーというフィルターを通すことで幅広いものの見方ができるようになった気がする。

まあこの状況を楽しんでる自分を正当化するための能書きですが。

 

去年の写真と比べてみよう

このサナギから毒蛾へと見事に羽化した我々の変貌ぶりを、約一年前に河原で手作りのホンオフェを食べるという今考えたらどうかしている記事のときに撮影した3名の写真で比べてみたい。


恐怖片眉男。もはやヤンキーを通り越して指名手配写真に。

その姿を見て、娘さんは泣いています。といいたいところだが、黒い服を着ている参加者が神田さんの娘だったりする。

ヤンキー云々というよりは、「真実を移す鏡」みたいな。

この一年の間にいったいなにがあったんだと問い詰めたくなるほどの劇的な変化。なにかがあった高校生の夏休み前後みたいでもある。ヤンキー恐るべし。


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