すかいらーくは大騒ぎだった
最後のすかいらーくで記念にハンバーグを食べようと決めていた。しかし、お店に到着してすぐ、それは甘い考えだったことを思い知らされる。最後のすかいらーくはお客さんでごった返していた。お店の外まで人が溢れていて、大変なことになっている。
「こんなに混んでるとは…」 「もうちょっと早く来た方が良かったですかね?」
僕たちは賑わうすかいらーくを前に、しばし呆然とした。
「とりあえず中に入ってみましょう」 「そうですね、なんとかなるかもしれないし」
予想以上の盛り上がりに気後れしつつ、店内に入ってみた。もちろん店内も順番を待つお客さんでごった返している。
席を待つ人たちの名前が書かれた用紙を見ると4ページにも渡っている。順番を数える林さん。
「47組待ちですね」
この時、時刻は21時近く。残り1時間で47組である。 きっと無理だ。
あのプレハブでDVDを吟味したりしていたから…。
プレハブで財布を取り出していた林さんの姿を思い浮かべつつ、一応自分の名前を書いた。とにかく順番を待つしかない。
ファミレスで47組待ち。人生初めての経験である。
各店の店長が集結
店内では店員さんたちが慌ただしく動き回っている。みんなが声を張っていて活気がある。スタッフ全員が一丸となっている感じが伝わった。
レジの後ろには店長からの挨拶文が飾ってある。
すかいらーくはなくなるが、同じ場所で「おはしガスト」として生まれ変わることが書かれていた。丁寧な字で綴られた挨拶文から、店長の人柄がうかがえた。
すかいらーく最後の店の店長はどんな人なんだろう?
店内を見渡すと名札に「店長」とある人が沢山いる。店長だらけだ。 疑問に思ってそばにいた店長に聞いてみた。
このお店の店長はどなたですか?
その店長によると、この日は各店舗から店長が手伝いに来ているらしく、ざっと10人はいるという。ウルトラマンシリーズの最終回みたいだ。シリーズの最終回になると、ウルトラの父や母やキングやゾフィーや他の兄弟が集結する。
で、誰がこの店の店長なのか?
誰よりも大きな声を出してお客さんをさばいていたこの女性が、川口新郷店の店長さんだった。溌剌と働いてはいるが、ふとした瞬間に淋しげな表情を見せている。それは、僕が勝手にそういう目で見ているだけで、実際はただ単に疲れているだけなのかもしれない。これだけ混めば普通に疲れる。
頑張れ店長(たち)!
と心の中でエールを送り、まわって来るかどうかも分からない順番をひたすら待った。
林さんと二人、ボーッと座って待っていたらテレビカメラが入ってきた。テレビ東京のワールドビジネスサテライトという番組らしい。インタビューされるかもしれないので、2人で回答を考えた。
やはり、すかいらーくへの強い思いを語った方が良いだろうということになり、林さんは「初めてのデートがすかいらーく」で僕は「すかいらーくでプロポーズした」という答えを用意した。もちろん嘘なので、実際カメラを向けられた時にちゃんと言えるかどうか不安だ。