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ロマンの木曜日
 
鹿せんべいを食べ比べる


奈良公園にて

一人暮らしを始めてから自炊するようになり、今ではそこそこ料理できるようになった。 そうなると次は手料理を他人に食べさせてみたい。ウマイと言われて尊敬されたい。

しかし残念ながら身の回りに食べてくれる人がいない。

そこで人がダメなら鹿せんべいを手作りして 奈良公園にいる鹿に食べてもらえばいいのではないかと思いついた。 煎餅でも丹精込めてポタポタ焼けば立派な手料理と言える。

そして最終的にはなぜか奈良公園で鹿せんべいを自分で食べることになりました。

小柳 健次郎



動機:誰かに食べさせたいけど誰も食べてくれない

たとえばハンバーグなんかは出来合いのものを買ったりせず、 ちゃんと材料を手でこねるところから作る。


ものすごいスピードで一生懸命こねます。
そして一生懸命焼きます。

料理出来ました。

実にどうってことない普通の料理。だけど帰り道が面倒だからあまり出掛けない極度の面倒くさがりから言わせてもらえれば、これだけでもとてつもなく丹精込めてる。


しかし丹精の向かう先はいつも自分だけ。

いただきます、自分。ごちそうさまでした、自分。せっかくの丹精もそんな自己完結で終わる毎日。

一人暮らしなら当たり前とはいえ、料理がある程度出来るようになると誰かに食べさせてみたくなるのが人の心である。

 

動機から出た企画:鹿に食べてもらう

それで食べてくれる人がいるなら なんの問題もなくこうして記事にもなってないわけで、 当然ながら僕の料理を食べてくれる人なんて周りにいない。

そこで思いついたのが奈良公園の鹿である。


※これは奈良公園の鹿ではありません

なんでも奈良公園の鹿は鹿せんべいというお菓子を与えられてると聞く。

ならば鹿せんべいの原料からレシピを想像してオリジナル鹿せんべいを丹精込めて作り、 それを食べさせればそれで充分手料理を食べてもらえたと言えるではないか!

という企画を思いついたのだがそれはダメだった。


ダメ。

奈良公園の鹿は人に慣れてるとはいえ野生の天然記念物である。それに想像だけで作った鹿せんべいなんて食べさせたら、各方面から変なもん食わすなと怒られる。

鹿にさえ食べてもらうことが出来ない。

 

企画-鹿=鹿せんべい作るだけ

しかし鹿に食べさせられないことに気づくまで、鹿せんべい作る気満々で材料や煎餅の焼き方などを調べていたのだ。このまま壺に封印してしまうのは悲しい。

とりあえず鹿せんべいを作ってみることしよう。作ってみてひどい物が出来たら無かったことにしよう。


そこそこのスピードで一生懸命米をつぶします。
そして電子レンジが一生懸命乾かします。

調べたところ鹿せんべいの材料は穀物と米ぬかの二つだけ。穀物は米でいいとして、次は米ぬかだ。


どう考えても煎餅作りにこんな量いらない。

米ぬかはお米をつぶす段階で混ぜるのか、焼きながら表面に塗るのか、本物の鹿せんべいがどう作られてるのか分からないので今回は両方でやってみることにする。


米ぬかを水に溶かす。本当にこれで良いのか迷う見た目。
ポタポタというよりはブジブジ焼けた。

こちらは最初から米ぬかを混ぜるバージョン。
割と良い匂いがします。

手前が混ぜて焼いた煎餅。奥が塗った煎餅。

人間から見ても結構おいしそうに出来てしまった。米ぬかを混ぜた時点ではちょっとどうなるかと心配したら、普通に香ばしい匂いとか漂っちゃってる。

本物の鹿せんべいがどんな味なのか知らないけど、 本物より断然おいしく出来たような気がする。いや本物より絶対おいしい。 文句が(本物の鹿せんべい側から)あるなら食べ比べたっていい。


そして私は新幹線に乗った。

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