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はっけんの水曜日
 
食品サンプル工場見学!


私が揚げました。

友人の結婚式二次会にいったら、新婦の大豆生田さん(おおまめうだと読む)が食品サンプルをつくる会社にお勤めの方だった。食品サンプルの会社といえば、私の中で工場見学したいランキングで一、二を争う憧れの業種だ。

大豆生田さんとはこの日が初対面だったのだが、せっかくの祝いの席だし工場見学をお願いしてみたら、普段やっていないらしいけれど快諾をいただけた。

関係ないけど、大豆生田さんは名字が漢字二文字の人と結婚したので、ちょっと物足りないといっていた。

玉置 豊



食品サンプルメーカー「ながお食研」にやってきた

友人の妻となった旧姓大豆生田さん、という表現は距離がある感じがするので、もう私の友人マメちゃんということでいいですかね。仕事場まで押し掛けるのだから。

ということで、私の友人マメちゃんが勤める会社はながお食研という会社で、社名だけきくと食品メーカーっぽいが、実際にいってみると普通の家っぽい会社だ。


町工場っぽいところかとおもったら、ほぼ民家だった。自宅兼食品サンプル工場なのかな。
敷地に一歩入ったら、地面にカレーが置いてあって焦る。もちろん食品サンプル。

ながお食研は親戚の食品サンプル会社に勤めていた現在の社長である長尾文美さんが昭和56年に独立して作った会社で、長尾さんはこの道42年の大ベテラン。この道以外は知らないという食品サンプル一筋の職人社長だ。


友人のマメちゃん。ではなくて、社長の長尾さん。

主にレストランなどにディスプレイされるサンプルをつくっているが、ネット通販やデパートの催事場などで一般に向けての販売もおこなっている。

それにしても友人の勤める会社に来るというのは、いつもと違う一面が見られるような気がしてドキドキする。なんていうほどマメちゃんをまだよく知らないんだけど。

 

食品サンプルQ&A

実際の作業の様子を見せていただく前に、長尾さんに食品サンプルについて前から聞きたかったことを質問してみた。


  レストランとかのサンプルは、オーダーメイドなんですよね。どうやってつくるのですか?
長尾 基本的には全部手作業。料理の現物を実際につくってもらって、それをパーツごとに型どりをして、複製して組み立てるんです。
  え、実物から型をとるんですね。
長尾 カキ氷とかラーメンは型がとれないですが、ステーキとかやから揚げなんかは、店によってサイズが違うから、シリコンで型をとって、そこに色を付けたビニールを流して作ります。
  そのアサリのスパゲティの場合は?貝殻とか本物にしか見えませんよ。
長尾 麺やアサリはどこの店も一緒なので、作り置きしてある材料を組み合わせします。ちなみにアサリの殻は本物。
  えー、本物を使う場合があるんですね。なんだかずるい。
長尾 そんなのつくっていたら大変だもん。ムール貝は貝殻が柔らかいからビニールでつくるけど。あとはゴマとかも本物を使います。昔はパン粉も本物を着色して使っていたので、ネズミに衣だけ齧られたりしたんですよ。いまは全部ビニールなので大丈夫ですけど。

これらは全部オーダーメイドだそうです。よく考えれば店によって内容が違うから当たり前だね。ラーメン屋とかサンプルに合わせて料理をつくっているのかと思っていた。
ビールのサンプルを見つけて大喜び。グラスの表面についた水滴がうれしい。でも冷たくはないし、触っても濡れない。魔法か。

  必要な材料を用意して、組み合わせるっていうところは、実際の料理と近いですね。
長尾 パフェなんかもパーツをいっぱい用意しておけば、その店に合わせて組み合わせるだけでしょ。
  それ楽しそうですね。食べられたらもっといいのに。なら本物で作れっていう話ですけど。食品サンプルはどういうのが作るの難しいとかありますか?
長尾 みんな作りやすいっていえば作りやすいし、みんな面倒くさいっていえば面倒くさいし。お客さんの好みがあるから、注文が多いと難しいですね。実物とまったく同じ色だとおいしくみえなかったりするし。

タイ焼きはもともと型があるものだけど、あんこなしの生地だけのものを特別に作ってもらい、それを型どりしている。透けたあんこがリアル。
デパートの催事場で売っていたら、紅白でダムから中継した某大物女性歌手が二つ買ってくれたという食パン時計。この時計を置いておいたらお腹が空きそうだ。

  自分が開発した技術とか表現方法ってあるんですか?
長尾 いや、基本的にみんな一緒ですよ。結局作り方はなんでもいいんですよ。最後に商品になればいいんだから。基本はどこも一緒で、細かいやり方自体は人によって、その工房によって違うから、どれが正解っていうのはないんです。
  作り方に特許があるようなものではないんですね。
長尾 仮に特許をとっても、それを維持するだけの予算は誰も持っていないですよ。
  それで食品サンプルって、いくらぐらいするものなんですか。
長尾 ものによりますけれど、オーダーメイドでだいたい平均すると、5〜6000円くらいというイメージです。
  完成度の割にはそれほど高くないんですね。
長尾 だって高かったら誰も注文しないじゃないですか。今はもっと安いところがあって大変なんです…。
  食品以外にもなにか変わった注文を受けたりすることはありますか。
長尾 キュウリの葉っぱにカビが生えたものを作りました。製薬会社が展示会で病気の説明をするためのものです。
  うわあ、本物の食品工場だったら、絶対同じ工場で作らないですね。

チクワの中に薩摩揚げのクマが入ったストラップ。もはや食品を超えた食品サンプル。実際にあったらお弁当用とかに売れそうだ。
カレーの匂いがするカレーストラップ。ビニールの匂いと相まって、ルーの入った容器そっくりの匂いに。

  話を聞いていて、だんだん自分で作ってみたくなってきましたけれど、体験会とか会社見学はやっていないんですか。
長尾 うちはやんない!学校とかからもやってくれっていう依頼は多いけれど、金になんない仕事は僕、嫌いですから!
  確かにやりたい人全員の相手をしていたら、きりがなさそうですね。まあ私がそうなんですけど。仕事としてやりたいっていう人も多そうですね。
長尾 実際やりたいっていう人は多いけれど、仕事となると別だから。すぐに飽きちゃうとか、自分の想像とは違うところがあるだろうし。
  マメちゃんはどうやって応募したんですか?
マメ もともとプラモデルとかが好きで、前の勤め先を辞めた時に、「あ、私は子供のころ、食品サンプルをつくる仕事がしたかったんだ!」って急に思い出して。電話帳をみて片っ端から電話をかけて、会ってくれたのがこの会社だけだったんです。
  おお、情熱的。
マメ 今年で十年になりますけれど、どんどん違う料理をつくっていくので、ぜんぜん飽きません。(目をキラキラさせながら)
  マメちゃんが飽きっぽくない人で安心しました。

15分くらい話を聞ければいいかなと思ったら、一時間近く話し込んでしまった。そうか、アサリの殻は本物なのか。そしてこの人がマメちゃんの上司なのか。

それにしてもマメちゃんとは知り合ってまだ一ヶ月くらいだが、食品サンプル会社に勤めるために、片っ端から電話をかけるようなパッションの持ち主だったとは。なんだか十年前の電話帳で食品会社を探しているマメちゃんの姿が想像できた。


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