水星は誰でも知っている惑星、だが……
惑星の名前を答えて、と聞かれたら、大体の人が指折り数えつつ、「水星・金星・火星・木星・土星」は答えられるだろう。全部がそのまま曜日にもなっている、古代からの超メジャー惑星だ。 あとは天王星と海王星。冥王星はこのあいだ、宇宙規模の不況でリストラされたので、惑星に数えない。
そして、このメジャー惑星5個のうち、水星だけがぶっちぎりで観測が難しい。 なんと、宇宙科学の研究者でも、見たことが無い人がざらにいる、という話である。かなり明確に意志を持ってチャンスを狙わないと、見ることが出来ない。 その理由は3つある。
理由1 太陽にものすごく近いので、日没後・夜明け前の一瞬しか見えない
これがまず問題だ。ほとんど太陽に隠れて見えない上に、見えるときでも一日に30分くらいしか見えない。一瞬だ。 そして夜明けと日没の間を短い周期で素早く動く。 そのあまりの動きの速さと、姿を見せない様子から、ギリシャ神話では「泥棒の神」としてまつられていたらしい。
理由2 地平線に近いところにしか見えないので、障害物があると見えない。
東京の区部に住んでいた僕が、さらに水星にあこがれた理由がこれだ。空が大きく開けているところでないと観測が難しく、都市部の地面からでは、ビルが邪魔をしてまず見えない。 しかも照明がまぶしい東京では、ほぼ絶望的だった。
理由3 地平線に近いので、天気の影響も受けやすい。
地平線近くは雲がかかりやすいし、大気のもやもやが邪魔をするので、夏だと望遠鏡でも見ることは出来ないと言われている。 冬の、空気が澄んで地平線の端まで晴れ渡っているような日で無いと、観測は難しい。
というわけで、真夏の水田の中にニラが生えたくらいに探すのが難しい水星なのだが、観測に挑戦するには、この空気が澄んだ今がベストシーズンなのである。
2009-2010年は観測に失敗
と、ここまでは全て去年の話。 去年の1月は早朝に見える時期だったので、早起きして東の空に向かってみたのだが、だめだった。
見るぞ!という最初の日に、早起きして外に出たら、まさかの曇り空で見えず、すっかり意気消沈。 気温は氷点下で寒いわ、仕事は寝不足でつらいわで、早起きのモチベーションがすっかり萎えてしまった。
それ以来、「今起きても、どうせ曇りかもしれないし」という考えが、僕を布団へと引きずりこむようになり、結局失敗。この夢は翌年に持ち越しになった。