石灰石を載せる貨物駅
地図上で秩父鉄道の線路をずっとたどって行くと、秩父駅の少し手前に、三ヶ尻駅と同じように線路に沿ってセメント工場が建っている場所があった。これは怪しいと思って地図を拡大すると、見事にそれらしき施設が存在していた。
ここは武州原谷駅。やっぱりふつうの時刻表には載っていない貨物駅だ。
線路沿いの道から眺めると、巨大な工場を背景に何本もの線路が敷かれていた。工場の建物の下を通っている線路もあって、おそらくセメントの積み込みエリアだと思うけど、立派なホームもあって、一見すると巨大なターミナル駅のようだ。いや、実際のところ石灰石やセメントにとっては、この路線でいちばんのターミナル駅だったのだろう。
なぜ過去形かというと、このところの需要の減少で、どうやらこの工場では現在セメントの生産をしていないらしいのだ。ここから発車する貨物も、セメントを運ぶ列車は現在のところ運行されていない。
僕が眺めていた間、石灰石を三ヶ尻の工場に運ぶ貨物列車は何本か発車したけど、広い構内はどことなく閑散としていた。少し寂しい。
これだけの大規模な工場がフル稼働していたときの様子を観たかった。きっと、長い貨物列車がひっきりなしにやって来てはセメントを積んで発車していたのだろう。
でも、今でも空でやって来た貨物列車が石灰石を積み込んで折り返して行く光景は見られるので、貨物好きとしては十分楽しい。
ところでこの工場について調べたら、ここで積み込まれる石灰石はこの近くではなく、群馬県にある鉱山からはるばるベルトコンベアーで運ばれてきているらしい。つまり秩父産ではないのだ。
しかし秩父市にも石灰石の鉱山はあって、それも秩父鉄道が運んでいるはずなのだ。ということは、もうひとつ別の場所に積み込み用の貨物駅があるに違いない。
なんて推理チックに書いたけど、さすがにそれは家を出る前に調べていた。というわけで、さらに進んで秩父市の中心を抜け、もうひとつの積み込み基地である影森駅に向かった。