絵本の「ちいさいおうち」を求めて
続いてやってきたのは青山。名前の響きからしておしゃれなので、なかなか今回探しているような物件はないだろうな、というあきらめムードも漂う街だ。
見つけたのはかなりイレギュラーな形ではあるが、おしゃれ雑貨店フランフランのフラッグシップショップ。これもまあ、一応高い建物に挟まれた低い建物という条件は満たしているだろうか。
判定としては微妙なところだが、よく探したら別に気になる物件があった。
ビルとビルの間に、ぎりぎりで命を灯しているかのように見える赤い建物。ディティールこそ違えど、建物の色と可愛らしさからか、「ちいさいおうち」っぽいなと感じた物件だ。
普通にいろいろな花を売っているお店であるのだが、小さいだけでなくかなり薄い。縦になってる写真をよく見るとわかるが、ビルとビルの隙間の三角形になっているスペースに立っているのだ。
私が上を見て写真を撮っていたからか、通りがかりの人の中には何かと思って上を見ている人もいた。気づくとこの店、かなり変わった条件で建っている。
今回の記事、最後に紹介するのは秋葉原で見つけた物件だ。ホビーやパソコン関連の店が立ち並ぶ中、まったく別の分野の店がそこにはあった。
iPhoneやら無線LANやらと看板を掲げたビルの間に、ぽつんとある時代を感じさせる建物。明らかに周囲の様子とは違うものを放っている。
店の名前は「構(かまえ)かまぼこ店」。かなり年季の入っていそうな「蒲鉾」の文字が建物にも浮かび上がる。どうしてここに?というシチュエーション。
しかし実際は、この店はただここに在り続けただけであって、周囲がどんどん変わっていったのだろうと思う。では今日の夕飯用に、ここでおかずを買っていくことにしよう。
店頭には「東京さつま揚」なる説明書きが。東京なのか薩摩なのか地名がだぶっているが、なんだか期待できそうな響き。店内にのケースにはたくさんの商品が並んでいて、このお店を利用している人がちゃんといるんだなあと、当たり前のようなことを改めて感じた。
単品だといろいろ迷ってしまったので、購入したのは700円の「おつまみセット」。夕飯のおかずにしたところ、やはりいつもスーパーで適当に買ってくるのとは一線を画したうまさ。電気街にたたずむちっこいお店で買ったというストーリーも、心情的においしさを盛り上げるような気もした。
ちょっとした移動の折にも、偶然見つけるとうれしくなるビルの谷間のちっこい建物。今回紹介した建物も、今後通りかかるたびに確認して、そこにあり続けているかどうかを見守っていきたい。
写真は最後の店で買ったさつま揚げについていた「蒲鉾の栞」。中には「おでんの味のきめ手は良い煉製品をたつぷり使う事」と書いてあった。「練」の字が難しい方だったり、「っ」が小さくなかったりと、ここでも歴史を感じさせてくれました。