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コラボ企画
 
匂いマップを作りたい

一口に「東京」といっても、東京にある町はそれぞれみな個性的で面白い場所が多い。 その町の風景が個性的なように、匂いにもその町独特の匂いがする場所もまたある。

ぼくはそんな個性的な匂いが気になる町を散策してみた。

西村まさゆき
(にしむらまさゆき)
1975年鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。最近気になる県境はいわき市と北茨城市の間にあるやつ。
> 個人サイト 新ニホンケミカル
TwitterID:tokyo26

地名そのままの匂がする「新木場」


新木場の駅看板は木

新木場駅は木の匂がする。 新木場駅に行くことがあったら、駅のホームでちょっと匂いをかいでみてほしい。新築の家の中に入ったような、木の匂いがかすかにするはずだと思う。できればJRのホームがおすすめだけど、有楽町線でもりんかい線でも匂いはすると思う。


階段の手すりが木

新木場はその名の通り、材木を取り扱う業者が集中している町だ。東京にはこういう独特の個性をもった町がたくさんあるけれど、地名のそのままの匂いがする場所はちょっとめずらしい、というか他にはないと思う。 新木場は乗り換えでよく降り立つけれど、駅の外に出て周りを散歩することはあまりない。木の香りが漂う新木場はどんな町なのか、匂いの元を探りながら散策してみたい。

材木商が軒を並べる


材木が積んである
こちらも材木店

駅を出るともうすぐに材木店が軒を並べる。 右も左も材木店だらけだ。駅のホームで匂った匂いは、まさにこの材木の匂い。木を切ったときに匂う材木の匂いが充満している。 うむ、新木場駅の匂いの元は材木店の匂いだった……まずい、この記事これで終わってしまう! しかし、そんな心配をしなくてもいい、面白いスポットが新木場にはあった。

木材と合板について学べる博物館がある


低層の建物が並ぶ新木場のなかで、ひときわ高いビルが博物館の入っているビルだ 

しばらく歩くと「木材・合板博物館」という看板を見つけた。さすが、木材の町ならではの博物館。こういうニッチな分野の博物館が多いのも東京の特徴の一つだと思う。この木材と合板の博物館は一体どんな博物館なのか、ちょっと入ってみた。

体験できる展示がいっぱい


ビルの3階4階が博物館になっている

博物館の展示は、基本的に木や合板の性質や仕組みを解説したものが多い。例えば、バルサ材として模型飛行機などによく使われるバルサがどれぐらい軽いのかを実際に持って体感することができたりする。


片手でも楽に持ち上がるバルサ(ポーズがダサすぎて悶死しそう)
比べてめちゃめちゃ重い木材の「カヤ」、重さはぼくの顔芸でご推察ください

1メートルほどの「バルサ」は片手でも楽に持ち上げることができたものの、ほぼ同じ大きさの「カヤ」は両手でもなかなか持ち上げるのが難しいほど重たかった。カヤは主に将棋盤や碁盤などに使われる木材らしい。

匂いの嗅ぎくらべもできる


スギ、ヒノキ、ヒバ、クスノキの匂いを嗅ぎくらべられる
んー、ヒバが好みかなー…

木は「軽い」とか「加工しやすい」というような特長の他に「いい匂いがする」というのもかなり重要だと思う。 そんな木の匂いを嗅ぎくらべられる展示もあった。 解説によると、木は自分で移動できないため、抗菌作用や防虫効果のあるフィトンチッドという成分を発散して自衛するらしい。このフィトンチッドという成分の匂いが、いわゆる木の匂いなのだ。 新木場の木の匂いはフィトンチッドが原因だったのだ。

今は貯木場に木がない


眺望が抜群によい

ところで、博物館で解説をしてくれたおじさんの好意で、普段は上がることができないビルの屋上から、新木場の町を展望させてもらうことができた。


新木場駅方面

新木場には木を水に浮かべて貯めておくための大きな貯木場が2つあるけれど、現在はほぼ使われていないらしい。なぜなら、現在は輸入木材のほとんどは、現地で合板などに加工されてから日本に輸入されるため、ここの貯木場に木を貯木する必要がないのだそうだ。


貯木場はからっぽ

もしかして、これって産業の空洞化ってやつでしょうか? こういうふうに、現実の風景で説明されると、そのリアリティはすごい。社会科見学ってこんなことを言うんだなと妙に納得してしまった。

木フューチャーのガレージセール


木靴売ってるの初めて見た
まさか新木場で出会えるとは

まさか新木場で出会えるとは
ビニール袋が小さいのがきになる

博物館からの帰り道、品揃えが雑なガレージセールを見つけた。木靴、まな板、こけし……。木であるという共通項以外は統一感がない。 果たして新木場でこけしを買う人はいるのだろうか? 他人事ながら少々気になってしまった。

銀座の香水の匂いはどこから?


皆様おなじみ。銀座三越でございます

次にむかったのは銀座だ。
銀座4丁目交差点に行くと、いつも香水の良い匂いがするなあと常々思っていた。 小見出しに「香水の匂いはどこから?」なんて書いたけど、犯人は分かってる。銀座三越だ。銀座三越の玄関から香水の良い匂いがいつもしているのだ。


匂いの元があっさり判明

その匂いの元は、銀座三越の入り口すぐ横にある香水売り場だ。ざっと見たところ、三越の1階には香水売り場はここしかない。これは良い匂いが外にちょっとだけ漏れるように配置されているのだろうか?

他のデパートはどうか?

銀座のほかのデパートはどうなのか。


和光はどうか? 
とくになにも匂わない…… 

銀座三越の目の前にある和光。
時計や雑貨しか扱ってないのでここは特になんの匂いもしない。しかし、しばらくクンクンしていると、なんか匂ってきた! 匂いの方向をみると……。


またお前か!

銀座三越だ!
三越の香水の匂いは横断歩道をわたって、和光の方まで匂ってきている……さすが三越、越後屋三井の略称は伊達じゃない。


おまちしてま〜す 

香水の良い匂いのはす向かいには……

銀座に来るとかぎたくなる匂いが、実はもうひとつある……。


あんぱん…… 

あんぱんだ。
銀座三越のちょうどはす向かい。和光の隣に木村屋はある。 しかし、今回この企画でのぼくの担当は「その場所独特な匂い」であって「おいしそうな匂い」ではない。食べ物の匂いネタは今回、控えようとおもっていたのだけど……。


眩暈がしそうなほど良い匂い!

店内に入ると、酒種あんぱんの、卒倒しそうなほどのいい匂い! で、結局買ってしまった。


牛乳と一緒に頂きました! 

木村屋のあんぱんは、中のあんだけでなくパンの部分もほんのり甘くてうまいのだ。
とりあえず、銀座の匂いは香水とあんぱんで決まりだと思う。

古書の匂いがする神田神保町

そして最後に訪れたのが神田神保町だ。
神保町。ぼくが高校生のころ、初めて上京したときにまず向かったのが神保町の古書街だった。それから20年近く、ことあるごとに立ち寄ってきた思い入れのある町だ。


本が日焼けしないように入り口を北側に向けて店が立ち並ぶ 

この神保町の岩波ホールのある場所の出口。ここから外にでようとすると、一瞬古書の匂いがするのだ。 ブックオフとかとはちょっと違う。古い紙とちょっと黴っぽい匂い。まさに古本の匂いだ。


裕次郎だ! 絵だ! 
坂本九と昔の宝島、そしてなぜかロボコンのかるたを売っている

神保町の古書店は、いろいろと専門分野が分かれていて、あちこち店頭に陳列されている本を眺めながらめぐっていると時間がいくらあっても足りない。


「地球のなおし方」も若干気になる
日本産の蟹類だけでこれだけ分厚い本ができるんですね、日本の蟹類は盤石だ。ちなみにこれ背表紙です

専門書の素人を寄せ付けないタイトルの付け方なんて本当にしびれてしまう。最近の「10分で分かる」とか「◯◯がすぐできる」なんて甘いことは一切いわない。 そのままストレートに「鉄筋コンクリート構造入門」だ。「入門」と銘打っておきながら、確実に素人は相手にはしてない。内容は見てないけれど、多分鉄筋コンクリート構造なみに固いことは確かだ。


まさかの高峰秀子推し。下の方のは原節子だ。原節子は可愛いなあ
まさに今のぼくのためにあるようなタイトルのほんだ!

なかには「なぜこんなところでこんな本を?」というものも多い。仏教書などの専門店でなぜか1冊だけ「人はなぜ匂いにこだわるか」なんて、今のぼくのためにあるような本が紛れ込んでいたりした。人はなぜ匂いにこだわるのか。気になるので最後のほうの結論だけ見ようと思ってペラペラとめくってみたけれど、この本は匂いに関する雑学集で、なぜ匂いにこだわるかということには特に具体的に答えている感じではなかった。

あれ、何しに来たんだっけ?

そうだ、ぼくは神保町の古書の匂いを探しに来たんだった……。すっかり古書に夢中になってしまって忘れていた。 実は、地下鉄の神保町駅のA6出口を出て地上に出た瞬間。ふわっと古書の匂いがするのだ。


A6出口。古書に夢中になりすぎて暗くなってしまった……

古書の匂いって、だいたい店の中に入ってクンクンしないと匂ってこないのが普通なんだけど、なぜかこの出口は近くに古書店が無いのに古本の匂いがする。一体なぜだろう?


スーツ店? もしかしてスーツの匂い? 

あたりを見回すと、あったのはスーツ店。もしかして、スーツの匂い? スーツの匂いと古本の匂い……たしかに似てるかもしれないけれど……。 とりあえず、スーツの匂いと古本の匂いは似てるかもしれない。ということは分かった。だがしかし、A6出口で匂う古書の匂いがスーツの匂いかどうかは分からない……。

以上「その場所独特の匂い」がする都内の3ヶ所を巡ってみた。普段の散歩でも匂いを気にしながら歩くと、町の違った一面に気づくことができるかもしれない。おすすめです。

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