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セブンイレブン鶏五目いなり寿司

セブンイレブン鶏五目いなり寿司
鶏五目いなり寿司 セブンイレブン 130円(今日から12月ですが、絵は一向に上達しません)

いつだったか夜に自転車を乗り回すことが趣味だった時期があった。
目的地は無く、ただひたすらにペダルをこぐのだ。それは1時間で終わり家に帰る時もあれば、道に迷い、家に帰りたくても帰れず2時間も3時間も自転車に乗り続けることもあった。

この趣味で分かったことは、僕という存在は警察官の心を掴んで離さないということだ。
とにかくしょっちゅう警察に声をかけられるのだ。「ちょっとすみません〜」と警察官は僕に声をかけ、「ご協力くださ〜い」と言う。次に警察官は自転車の登録番号を懐中電灯で照らし、「名前教えてくださ〜い」と僕の名前を聞く。そこまでの作業を終えると、次は無線機に向かい、登録番号を読み上げ、僕の名前を言う。その後は、僕に向かって「ご協力ありがとうございま〜す」と言うのだ。毎回台本でもあるかのように同じやりとりだ。

これは、僕が盗んだ自転車に乗っているのではないかと疑っているのだ。
雨ざらしのボロボロの自転車に乗っていたからかもしれない。先週も僕に声をかけた警察官がまた声をかけてきた事もあった。僕の前を走っていた自転車には声をかけず、僕には声をかけるのだ。

しばらくして引っ越したので、それを機に自転車を買い換えた。
GIANTの黒いクロスバイクだ。黒光りがカッコいい自転車だった。前のボロボロの自転車とは違うので、これで警察官に声をかけられることは無いだろうと思った。しかし、相変わらず声をかけられた。「ちょっとすみません〜」と。「ご協力くださ〜い」と。

顔がいけないのだろうか。
子供の頃は天使のような顔だと親が言っていたこの顔が。成長とともに急激に老け顔になったこの顔が。ふと、自転車を乗り回し家に帰って来た後に鏡を見た。もし僕が警察官だったらどうだろう、と考える。鏡に映ったヒゲ面の顔はまさにそれで、確かに自転車を盗むような顔だった。仕方が無いと思った。それ以来、自転車に乗るのをやめた。もう2年は乗っていないと思う。

しかし、「鶏五目いなり寿司」はノリにのっている。
勢いのある美味しさなのだ。一口噛むとアゲから深みのあるダシが口いっぱいに広がり、鶏がいい仕事をしている五目御飯とスピーディーに絡む。その味を一度味わったら最後、もう一口、もう一口と休み無く食べ続けてしまう。いつまでも変わらぬ味でいて欲しいと願ってやまない、おにぎりだった。 ( 2010/12/01 21:00:00 )




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