いつだったか、部屋が砂利だらけだったことがある。
その当時、僕が使っていた枕は、誰かから貰ったとにかく重い「砂利」が入った枕だった。枕は大体において片面が柔らかく、もう片面が硬く、そこにはそば殻が入っていたりすると思う。僕の使っていた枕はその硬いところに「砂利」が入っていたのだ。

実家にいる頃から使っている枕で、長年の雑な扱いが功を奏して、と言うと変だけれど、そんな付き合い始めて3年目みたいな倦怠期のような、どこか愛の足りない扱いのために、枕の布がビリっと破けて部屋中に砂利が飛び散ってしまったのだ。

部屋中が砂利だ。
そんなに入っていたのかと純粋に驚くほどに部屋中が砂利だった。フローリング オン 砂利。日本庭園みたいだった。

避難、避難と椅子に座り、物と砂利で溢れた6畳のワンルームを見渡すと、なかなかに風流だった。だって、砂利なのだ、風流だ、と掃除機をかけないでいいように自分に言い聞かせた。掃除機をかけるのが面倒だったのだ。

しかし、部屋を歩くと必ず砂利の上を歩くことになり足の裏が痛かった。
たぶんどこかのツボを刺激しているのだ。ただ考えようによっては、これで健康になるのではないかと思う。足ツボマッサージというものがあって、それはお金を払って行ってもらうものだ。それが無料なのだ、と1カ月ほど砂利を放置した。フローリングの表面がキズだらけになった。敷金はおそらく返ってこない。

そして、「チキンペッパーマヨ」はそんな僕の悲しみを忘れさせてくれる。
スパイシーなその味わいは、エビの甘み、御飯の甘みを十分に引き出す。僕を健康にした砂利みたいだ。しかし、ペッパーは何もキズつけない。ただ、お口に幸せだけを呼んでくれるだけなのだ。いつまでも変わらぬ味でいて欲しいと願ってやまない、おにぎりだった。 ( 2010/12/03 21:00:00 )