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1月のテーマ:汁


はっけんの水曜日
1月の海でビール鍋



林さんが紙パックの日本酒『まる』(白鶴酒造)を取り出す。

「大塚さん、こないだ打ち合わせで、『海のそばでビール鍋っていうと、なんか和ダイコがどんがどんがどんがどんが鳴ってるところで、海の男たちが魚をぶつ切りにして豪快に鍋に突っ込んで、強い度数の酒を飲んでるイメージ』って言ってたじゃないすか」
「……そんなこと、言いましたっけ?」
「言いましたよ! 僕、この『まる』のCMのイメージなのかなと思って、買ってきたんですよ。あと魚も」

林さんが掲げたビニール袋の中には、サンマとアジがあった。
日本酒『まる』。民謡をBGMに、矢崎滋さんが漁港で微笑むCMだ。

「せっかくだからイメージ写真撮りましょう。さ、魚を両手に持って」

親子連れが楽しく笑いさざめく公園で、生魚を持って歩く。砂浜まで出て、『まる』のCM気分で、ポーズを決める。



「もっと勇壮果敢な感じにポーズ出来ませんかね? これから豪快に料理するぞお! っていう感じの……」
「無理です」

『海ごはん山ごはん』からほど遠い私だが、『まる』からも遠い。

とりあえずビール鍋を仕込む。方法は水炊きの要領といっしょ。お好みの野菜や肉、練り製品など材料を入れて、水のかわりにビールで煮るだけ。ビール以外は何も入れない。ダシも醤油も入れない。ごくカンタン。

ビールは今回、一番しぼりを使用。何の名柄でもいいけれど、発泡酒は薄いので止めたほうがいいかもしれない。
ちなみにうちの実家では、キリンラガーの瓶ビールを使っていた。



どぼぼぼぼ、とビールを注入していると、2人がのぞきこんで「げえっ」と声を出した。

「これ、なんでビールなの?」
「さあ、物心付いたときから、ビールだったし……」
「子供が食べたら、酔っぱらっちゃわないの?」
「うーん、私は酔わなかったけど……たぶん煮えると、アルコール飛んじゃうだろうし……」
「誰の発案なの?」
「えー、誰だろう。たぶん父かなあ。もう死んじゃったんで、本人に聞けないけど……」
「真相は闇の中なのねえ」



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