ラストトライ。
立ち食いそば屋ではなく、座って食べるおそば屋「宮城野」にやって来た。

ここでも今まで同様、入り口近辺に席を取った。立っていようが、座っていようが、注文前にカレーの匂いを届けなくてはいけない事に変わりはない。

僕の右奥には既におばさん2人組みが座っていて、とろろそばをすすっている。
この人たちを巻き込むのは難しい。よっぽどでもない限り、とろろそばの後にカレーうどんには流れない。
これから入ってくるお客にターゲットをしぼる事にした。

そしてラストトライに向け、秘密兵器をパワーアップさせる。

ダイソー製携帯扇風機の2重奏だ。
ウィーンウィーン……。
音量も倍増され、ついにリーサルウエポンが始動した。

僕の手許にカレーうどんが届き少し経ってから、男性2人、女性1人の3人組が楽し気に会話しながら入って来た。

最近のババシャツって性能はいいけど、すぐに脱げないのが難点だ。とか女性が言っている。
そんなお気楽な事を言ってられるのも今のうちだ。
このカレーのカーテンをくぐったら最後、あなたたちは無意識にカレーうどんを頼んでしまうだろう。

ヴィーンヴィーン……。

3人が席に着く。
肩ごしに注文の声が聞こえる。

過信だった。

天ザル、ザル、わかめ。彼らのオーダーにカレーうどんの面影はない。

2軒目でやめておけば良かった。
何事も引き際が大切ですね。