なぜかノレンのかかっている交番のおまわりさんも、やたらカッコイイ庁舎の市役所の観光課の人も、とても親切だった。
「でも今日、店って休みなんですよね」「昨日だったらねえ、祭りの屋台でヤキソバ出てたんですけどねえ」「あとねえ、地元の人が食べに行くところって、車で行かないといけないような、遠いところにあるんですよねえ、だから歩きの観光の人には行けないんですよねえ」「……あ、でもいま、やってそうな店、電話で確認しますからねえ」「……やってそうな店の電話番号が分からなかったので、向かいの八百屋さんに電話してみたら、営業してるみたいですって」
街のマップにマルを付けてもらって、その店へ歩く。
2件目、お好み焼きと焼きそばの店「おおで」も、また女性がひとりで店番をしていた。
「はい、いらっしゃい」
メニューを見る。
やきそば、お好み焼きの横に、「文字焼き」という謎のメニューがあった。
「……文字焼きって何すか?」
「あのねえ、もんじゃより、ちょっと濃いのよ」
「文字が書けるくらいの堅さってことですか?」
「そうよ〜。うまいこというわね! うふふ〜」
「焼きそばは、ジャガイモが入っているんですよね?」
「そうよ〜。あれ、ここらへんの人じゃないの?」
「あのう、やきそば食べに、東京から来たんです…」
「えーほんとに? 昨日、お祭りだったんですよ〜。あら〜」
文字焼き(ミックス)と、焼きそばを頼んだ。
「あ、あと、生中ふたつお願いします」
「ハ〜イ」
店内には「冬のソナタ」のサントラがかかっていた。
きんきんに冷えたグラスに、ビールがつがれてきた。んぐんぐんぐ、プッハー。
「おいしい…」
「おいしいわ…」
「生きてるって感じ」
しばらくして、「文字焼き」材料と「ヤキソバ」材料が盛られてきた。
「ハイ、サービスで大盛りにしちゃいましたよ!」
「あ、ありがとうございます……」
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