ケモノ道のような小さな道を歩き続けていたら、線路にぶつかった。
むき出しの線路を渡ったのは、何年ぶりだろう。 「あ、いや、会社員のとき、忘年会でめちゃめちゃ飲まされて酔っぱらって、終電後の西武池袋線の線路の上を、吐きながら歩いて帰ったことあったなあ……」 と、 イヤなことを思い出しながら渡る。
「……もしかして、ここらへんに、彼の実家があったりして。さっき道をきいた女の人が、彼の母親だったりして。いや、もしかして彼に逢っちゃったりして。スリル満点。いや……もう別にスリルなんて、何にもないんだけどさ。ちょっとだけ恐いよなあ。どんな顔していいのか、全然分からないもんな」
……さらにテクテクテクテク歩くと、黄色い固まりが、道の向こうに見えてきた。