そんなわけで、林さんとハンバーグレストランで待ち合わせ。早速判定してもらおう。機械の使い方を説明して、まずは通常時の声を登録してもらう。

「じゃあいきまーす。林雄司です。ウインナーが好きです。ウインナーが好きです」

「いや、それはそうかと思いますが、もっと客観的な事実を言った方が…」

「かなり自信ありますよ、ウインナーが好きというのは」

「…まあ、それはそれでいいんですけれども、とりあえずは年齢とか職業とか…」

　林さんの思いを無下にするつもりはないのだが、やはりここはあくまで事実をおさえておきたいところ。なんとかなだめて外の天気や住んでいるところのことを話してもらった。

　注文したおいしそうなウインナーがほどなくテーブルに運ばれてくる。こんなものが来てしまって冷静な気持ちでものを言えるのか心配にもなるが、いろいろ話して試してもらった。

「おお、これはすごいですね！」と林さん。実際にその通りなのだそうだ。私の耳にはどちらも同じようなトーンでしか聞こえなかったのだが、機械の判定はばっちり出ている。

「ほんとですか、当たりますねえ。えーと、どうしましょう、『妻を愛している』とか言ってみますか？」

「…先に法師丸さん試してくださいよ」

「…いや、そういうのは……。やっぱり、ねえ」

「………」

　黙り込んでしまった２人。お互いに自信がないわけではないが、余計ないさかいの火種や心の暗部につながるようなことは言わない方が無難である。

「あれ？」と林さん。突拍子もないウソを言ったのに、判定は真実。

「そう言われてみると、イギリス人だったかもしれないと思えてくるから不思議ですよね」

　私も自分で試したときに似たような風に思ったが、そういうことでないだろう。機械に判定される問題ではないと思う。お互いに自分というものはしっかり持った方がいい。

　そうこうしているうちに飲んでいたジョッキが空になった林さん。メニューには魅力的なセットメニューが並ぶが、どちらにしようか迷っているようだ。こういうときにもウソ発見器は使える。

「これ、当たってますよ！」と林さん。

「さっきウインナー食べて、また肉食べるのもどうかなと思ってポテサラセットのことも考えたんですけどね、やっぱりほんとは生ハムセット食べたいなと思ってて」

　ウソ発見器はそんな心のひだまで読み取ったのだろうか。野菜をとらなきゃという気持ちの陰で、やはり隠すことのできないハムへの思い。

「もう吹っ切れましたよ」

　生ハムセットを手にしてとてもうれしそうな林さん。人間ってこうあるべきだとさえ思う。