大家さんに会わなくてよかった
昼なら何とかなるさ
翌日、家でメイクをして外に出た。昨日の反省をふまえ、目のまわりのメイクを少し変えている。目の上を重点的に塗った。
住宅街を歩いてみよう。寄っておいで、子供たち!ピエロだよ。
耐えられず、会釈してしまうピエロ
街の空気がだいじだ
ああ、辛い。住宅街はどうもまずい。だって住宅地にピエロいないもん。
お祭りっぽい雰囲気の街のほうがなじむのではないか。年中祭りみたいな街、渋谷だ。渋谷に行くことにしよう。行くのか?この格好で。
とりあえず山手線の駅までタクシーに乗ることにした。
「あついですねえ」 「ほんとに」
タクシーの運転手さんはまったく僕がピエロであることに触れようとしない。
・芝居やってまして、パンフレットの写真を… ・友達のイベントの手伝いで…
考えておいたいいわけ(全部うそ)は使わずに済んだ。
渋谷まで山手線
駅にも子供達はいたが、みなポケモンスタンプラリーに夢中でピエロは眼中にないようだった。まあ、いい。渋谷に行けばなんとかなる。そんな前向きなことを考えながら電車で移動していた。
しかし、あとから写真を見るとすべて目が半開きだ。いま自分がいる状況を受け入れたくなくて無意識に目を閉じようとしていたのかもしれない。