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特集


ちしきの金曜日
 
自分の姓をさかのぼる

朝から大雨でした

起きてみると外は大雨だった。

傘をさしていくのはいやだなあと思ったけど、さすがにもう一泊するような時間もお金もない。

女将さんに案内されて1階の食堂へ。着いてみるとテレビのニュースが大雨洪水警報を伝えている。女将さんによると、このあたりでこんなに雨が降るのは最近めずらしいらしい。何も今日でなくてもいいのにと思ってしまう。


分かりにくいですけど、けっこうな雨。

いかにも旅館風の朝食。となりでは女将さんの親戚という大学生が留年をかけた試験勉強をしていた。


ご飯を食べ終えて、自室に戻る。

しばらくぼーっとしていると、急に小雨になってきた。この降りかたはなんだか夕立みたいだ。朝だけど。

何にしろ、これなら出かけられる。

女将さんや、留年のかかった大学生に挨拶をして出発しようとすると、女将さんがかけよってきてビニール傘を貸してくださった。

もうほとんど止んでいたけど、ありがたく使わせて頂きました。


朝勝館の外観。来たときはさっぱり見えなかった。

止んでいたけど、せっかくなのでさしていく。

 

まずは図書館へ

ここでいきなり三土村の場所まで行ってしまってもいいのだけど、今日はまだまだ時間がある。

地元の風土記などがあれば、何かの参考になるはずだ。まずは図書館で資料を調べてみよう。


日野町図書館で調べていきましょう

 

貴重な本を見せていただきました

「日野郡史」という本を見せていただいた

図書館の司書の方に事情を説明したところ、鍵のかかった書庫に置かれていた「日野郡史」という本を見せて頂くことができた。

大正時代にまとめられたもので、このあたりの歴史についてかなり詳しくかかれているらしい。

日野郡史。全4巻。

三土の地名の由来についての記述を発見

調べてみると、三土村は少なくとも1683年からこのあたりにあったようだ。

そして「村名の変遷」という章に三土の地名の由来に関する考察がかかれていた。

三土 

昔蛟龍の出でしか又水清き所なれば水神を祀りしかにより此村名の起りしならむ

(出典:名著出版「日野郡史」 )

まとめると、

  •  蛟龍というものが出没していたか、
  •  水神を祀っていたか何かで、
  •  三土という地名になったのだろうか

ということだろう。だいぶ弱気な書き方だ。

蛟龍の蛟という字は、国会図書館で見かけた蛟網神社と同じ字だ。何と読むのか分からないけど、やはり関係がありそうだ。

ただし、意味がよく分からない。龍や水神がどうして三土に結びつくんだろう。

いよいよ三土へ

「蛟龍」に関しては宿題にしておいて、そろそろ三土に向かうことにしよう。

図書館の方に聞いてみると、近くまでバスが出ているらしい。数時間おきにしか運行していないようだけど、ちょうど次の便が近い。それに乗って行くことにした。


バスにゆられて、

ご先祖さまの(おそらく)故郷へ。

お!左に行くと三土。なぜか嬉しい。 

根雨駅前から三土へは、南東の方角へ山に入っていくような形になる。

→地図

しばらくすると、この先を左に行くと三土、という標識が現れた。たしかにここに三土がある、という気がして、妙に嬉しくなる。

 

歩きで三土へ向かいます

最寄のバス停でバスを降りる。

ここから三土まではおよそ2kmほどある。普段ならそんなに歩くのはだるいなあと思うけれども、今日は違う。なんだか本当の里帰りのよう気がして、わくわくしてしまう。

もちろん、初めて来る場所なのだけど。


この先三土の標識をふたたび発見。

どっちを向いてもこういう風景です。

緑色の蝶が数匹。本当に田舎だ(いい意味で)。

そしてこれが三土川です。

日の光が差し込んでとてもきれい。ただし最近は林の面倒を見るような若い人がいないらしい。

 

三土と書かれた墓は見当たらない

お墓を拝見

途中でいくつかの墓地を見かけた。

この土地に古くから三土姓の人が住んでいれば三土家の墓もいくつか残っているはずだけど、予想に反して一つも見かけることができなかった。

ここにはおもに長谷川さん、生田さんという姓の方が住んでいらっしゃるようだ。

 

ついに三土の集落に着いた

この先を進んでも山しかないんじゃなかろうか、という道を進んでいると、道を曲がった左手に集落が見えてきた。ここが探していた三土にちがいない。


ここが三土のはずだけど、特にそれを示すものが見当たらない。

唯一電柱に「三土」と表示されているのみ。


さっそく村の人にお話を伺おうとおもったけど、あたりには人ひとり見当たらない。みなさん家の中にいらっしゃるんだろうか。

 

やはり三土さんはここにはいないようだ

生田さんという方にお話をうかがう

ひとりだけ、庭で何かの作業をしていらっしゃる方をみかけた。声をおかけして、お話をうかがう。

―東京から来たものですが、このあたりに三土さんという方は住んでいらっしゃいますか?
「いや、住んでないねえ。」

―それは最近ですか、それともずっと昔から?
「昔からだね。すくなくとも50年くらいは、三土っていう名前の人は聞いたこともないよ。」

―なるほど。では、三土という地名の由来について、何かご存知ですか?
「いやー、知らないねえ。ごめんね。」

というわけで、三土さんは以前からここには住んでいないようだ。この場所での調査はこれまでにして、引き返すことにしよう。

 

東京にもどって、蛟網神社を調べる

大きな手がかりは見つからなかったけれど、奇妙な里帰りを実現することができて満足だ。

図書館で読んだ日野郡史の内容はヒントになるかもしれない。蛟龍、あるいは蛟網神社について調べてみることにしよう。



 

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