渋谷のハチ公といえば、亡くなった主人を迎えに毎日駅に通っていたことで有名だ。
なのだが、現在の渋谷にひきつけて考えると、あの混雑した渋谷のスクランブル交差点や109前を毎日犬がとぼとぼ一人でかよっていたことになってとても奇妙だと思う。
いったいハチ公はどこから渋谷駅前にかよっていたのだろう?道玄坂を下ったりしていたのだろうか。そんなことが気になったので、ちょっと調べてみました。
(text by 三土たつお)
税務署からの広告塔にされるハチ公。やや不憫。
ハチ公について検索すると、当時の切ないエピソードについて書かれたページがたくさんひっかかる。亡き主人を待つ忠犬。なんて悲しい話だろう。
ただし、ハチ公が現在の渋谷でいうとどのあたりに住んでいて、どんな道を通って駅前まで来ていたかということは、なかなかネット上には書かれていない。
調べてみると、地元の渋谷図書館に当時のことを書いた文献があるらしかった。まずはそこへ行ってみよう。
図書館で手がかりを探す
渋谷駅から10分ほど歩いたところにある渋谷図書館。その地下に「ハチ公文献集」というそのものずばりの名前の本があった。
結構ぶあつい本なのだが、借りることができないそうなので、その場で血まなこになって情報をさがした。
血まなこ
すると、ほぼ近いことが書かれているページが見つかった。まとめると次のとおり。
ぼく垂涎の情報が満載
近所の人に訊く
ここでは小泉湯を手がかりに小林さんのお家を探してみる。
ハチ公のお話は80年ほど前のものだが、検索すると小泉湯は10年くらい前まで同じ場所で営業していたらしい。地元の人ならきっとその場所を知っているだろう。
富ヶ谷周辺でききこみ開始
渋谷区の富ヶ谷というところへ行き、古くからやっていそうなお布団やさんのおばあさんにたずねてみた。
「小泉湯ね。ああ、あったよ!今はマンションになっちゃったけどね。」
おばあさんは小林さんの家のことも知っていた。やっぱり近所の方は知ってるんだ!と思うと嬉しくなる。ここから近くらしい。さっそく行ってみよう。
これかな?
やがて、教えてもらった場所の近くでコインランドリーを見つけた。経験上、コインランドリーの近くには銭湯がある。もしやここが小泉湯跡か?
うーむ?
しかし、それらしきことは特にどこにも書いてない。コインランドリーも、ただ「コインランドリー」と書いてある。もうちょっと名前とかつけてもいいのに。
通りがかった方に伺ったところ、確かにここは前まで小泉湯で、そしてだいぶ昔には隣に小林さんが住んでいたとのことだった。
よかったよかった。見つかった!そうか。こんなところからハチ公は駅前まで通っていたのか。
ハチ公のかよった道を歩く
ではここから、文献の情報をもとにしながら、ハチ公のかよった道を渋谷駅まで行ってみよう。
代役です
この、ハチ公に見立てたぬいぐるみとともに。(東急本店で買いました)
『ハチの渋谷駅へ行く日課は正確であった。(中略)夕方は四時近くになると出かけ、戻るのは午後五時過ぎから六時頃であった。』(林正春編「ハチ公文献集」より)
このときの時間は夕方の四時半ごろだった。ハチ公は4時ごろには出発していたらしいので、ちょっと遅刻だ。