もうずっと毛玉のままかと思っていたが、予想以上に早く表にやってきたナマケモノ。ロープを伝って出てくると、それまでいなかったギャラリーたちが急に集まってきた。
「おお、ナマケモノが歩いてる!」「ナマケモノなのに動いてる!」と声を上げるギャラリーのみなさん。怠け者だというイメージがあると、ちょっとのことでも感心される。こうした手法は自分も日常生活の中でぜひ取り入れていきたい。
そのあとも、ゆっくりした動きながらしっかりと進んでいくナマケモノ。そう、この綱の先には外の木へとつながる穴が空いているのだ。
おお、こんなにたすやくナマケモノの移動シーンが見られるとは。本音のところ、こんな穴が空いていてもそこをナマケモノが通るのは相当レアなことだろうなと思っていたので、かなり意表を突かれた感じだ。
ちっともなまけてないじゃん。
観察を始めて25分ほどだろうか、すっかりナマケモノはパフォーマーだ。話が違うじゃないか。いや、別に話を聞いていたわけではないが、なんだか釈然としない。
檻のそばにいた人たちも木の上の様子に釘付け。こんなに人気者になってしまうとは。そのなまけっぷりも期待してきた者としては、ちょっとさびしいような気持ちにもなる。
しばらくの間、木にたたずむと再び檻へと戻っていくナマケモノ。どうも落ち着きがないやつだなあ。全然なまけものという感じがしない。これでいいのだろうか。
脚だけで綱にぶら下がって食事をする様子も見せる。なんだこの余裕は。動物園という環境で、自分を魅せる喜びを知ってしまったのか。
このあともまた奥の展示室に戻ったり、やっぱり再び表に出てきたりと、期待を次々と裏切る動きっぷり。きみがこんなにアクティブな奴だとは思っていなかったよ。もうきみとは友達になれそうにない。
1時間ほど出たり入ったりを繰り返し、12時過ぎには奥の展示室に戻ってきたナマケモノ。角度の関係でなかなか顔を正面からとらえることができなかったのだが、たまたま顔を檻の外側に向けた瞬間を撮った1枚。
流行りの言葉で言うと、ブサカワイイという感じだろうか。一発でかわいいという風ではないが、目を離したくない気持ちにはさせられると思う。
なんだかんだとそれほどじっとしているわけでもなく、とても怠け者という感じではないナマケモノ。その名前から、なまけてると勝手に思い込んでいて申し訳なかったという気持ちにもなってくる。
そして感じるのは一抹のさびしさ。シンパシーを感じていた行く先を失ってしまったような観察でもあった。
●アグレッシブなきみに気持ちうらはら
裏切られたのか安心したのかよくわからないナマケモノ観察。名は体を表すというけれども、まあそれほど徹底してない、という半端な検証結果だろうか。
ちなみに写真は動かないことで最近注目されている鳥・ハシビロコウ。こちらがいるのはナマケモノの檻のすぐ裏。
観察してみると、こちらもそれなりに動いていたので少し残念な気持ちになったりもする。これに懲りず、今後も本気で動かない動物たちの情報があったら注目してみたいと思う。