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ロマンの木曜日
 
闇アルキ。月アソビ。(闇ガイドとゆく月夜の里山)

湿原にて。月と遊ぶ。遊びまくる。

はるか昔に思いを馳せた林道、月の道を抜けて、本日のメインステージ、湿原に到着しました。

思い思いの場所(とはいえ離れるのもまた怖い)にシートを敷き、まずはいっせいに仰向けになります。

ひとしきり月光を浴びたあと、軽食を食べたり、参加者にふるまわれた月見団子を頂いたり、月遊びを楽しみながら談笑しました。


……と言われてもマムシさん、見えないんですけど。
我々が一番怖いかもしれない(ハタ目には)

 

サングラスにハッーと息を吹きかけて見ると月の光冠ができる。月のオーラはメガネの中にあった。
小さな穴から月を覗くと、その意外な小ささに驚く。月はこんなに小さくそしてはるか彼方にあるのだ。
両手交差組みをして手に闇を作る小穴のバリエーション。月と自分だけの世界。名付けて『マンツームーン』

月に導かれ話は怪しげな方向へ

みなさんの、知的レベルの非常に高い会話の途中、話の腰を折るほどに低俗な質問を投げかける女があらわれます。私のことです。

12年前から本格的に闇と絡みはじめた中野さんですが、恐ろしい体験をしたことはなかったのでしょうか。

「水量の多い沢の近くで、子どもの声でわらべ歌が聞こえてきたことがありますよ」

「熊に遭遇したことはないけど、気配は感じますね」

「たまに点呼をすると人数が増えているんじゃないかとちょっとどきどきします」

そういえば、今日も二回ほど点呼をしましたが、12人だか13人だか、最後までわからずじまいでした。

……。
それは中野さんのおおらかなお人柄のなせる技では……とも思いましたが、いやいややはり、月のせいということにしておきましょう。ロマンがあります。

そしてカマキリ伝説へ

霊の存在は信じていない私ですが、月の下で語る怪しげな体験ほど、ぞぞっとするものはありません。

その後、なんの話の流れからか
「私はカマキリが触れないのです。カマキリだけがダメなのです」
と発表しましたら、周囲のみなさんが驚異の声をあげました。

「ええええっ!!」

いやこちらのほうがびっくりです。

むしろ下界では、昆虫を触れる女としてめずらしがられるほうなのですが、まさかここで、
「カマキリも触れないのー?」
と驚かれる日がこようとは思ってもいませんでした。

さすがに月の下に集う方々は格がちがうと思い知りました。



驚愕ハプニングから5分くらいたったころでしょうか、私はみなさんの和やかな様子を撮影しようと、離れた場所にひとり移動しました。

カメラを構え、ファインダーを覗くと、目の前を3つの物体が通りすぎたような気がしました。気がしましたが気がしただけです。つまり、もちろん気のせいです。
しかしその直後、私はみなさんの元へ猛ダッシュで戻ることとなります。

そしておよそ1分ほど、沈黙時間を設けました。
あまりにも出来すぎな演出に、その激白がためらわれたのです。けれどもひとりで楽しむにはあまりにも怖すぎました。

「実は今こんなものが……」


え……。カ、カマ……?※加工などいっさいしていませんので念のため。

きまぐれな煙の動きに合わせる。慌ただしい月見によろこぶ中野さん。
手のひらに映った月玉を握りしめることもできます。月を、もっと、楽しもう。

空に月があるかぎり探究心は続くらしい

中野さんは日本古来のオーソドックスな月見も大切にしつつ、一歩踏み込んで月をもっと楽しむための遊びをいくつも考案しています。 当日もさまざまな遊びを教えていただきました。

「そうだ、煙草のけむりを通すとフィルターになって月の光環が見えるかもしれない」

と、けむり越しに月を覗く中野さん、やや必死です。

※しつこいですが、こちらのけむり遊びはカマキリ事件のずっと後のことになります。

 

月玉模様で闇を演出しよう

傘に小さな穴をいくつもあけた自作の「月傘」もお見事でした。
傘をさすと、上半身に月の光りが射し込んで妖艶な(妖怪な)水玉模様を作ってくれます。
私もしくはドクター中松先生でしたらすかさず特許を申請するところです。

中野さんは著書の中でその光を「木漏れ月」と称していらっしゃいました。

 



 

いつでもどこでも誰とでも

数日後、同行者のツマさんが
「月のパワーみたいなのがすごかった。身体が軽くなったよ。今度から月を見たらファーって仰向けになる」
と知人に話していました。たしかに慣れない登山後に1kg体重が減ったそうですが、それだけではない未知なる威力が月にはあるようです。
よかった。懐中電灯のことはすっかり忘れているようで本当によかった……。

それにしても、林道でのふしぎなあの感覚はいったいなんだったのでしょう。
たとえば今ここがどこで、どんな時代で、大げさに言えば自分が誰かさえ、そんなことはとるに足らないことのような気がする錯覚の月道。

闇が五感を過敏にして、すべての神経がフル活動するからなのでしょうか、下界のくだらないことはすべてどうでもよくなる、まったくすばらしい体験でした。

闇と月は、いつでもどこにでもあったのに、今まで本当にもったいないことをしました。やみつきになりそうです。

あ……。

カマキリ雲と名付けたあの画像は、その日のうちに中野さんにメールでお送りしました。友人等にも送りつけました。
怖いような得したような複雑な思いを、誰かと共有したい気持ちでいっぱいだったからです。

中野さんは過去にも似たような経験をなさっていて、霧とも雲ともつかぬものに接近されたことがあるそうです。

「雲と考えるのが妥当」と結論づけて下さいました。

そして

「雲」という字と「霊」という字って、似てますね。とも。

山を抜けた直後、線路脇に落ちていた彼または彼女

この偶然も月のしわざ。
わざわざ里山へ出向かなくても月は頭上にいます。キャンドルナイトでハンパなエコナイトを迎えるくらいなら、月光ナイトをおすすめします。ちょっと不思議な体験もできるかもしれません。


 

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