「小学校低学年向けは…『キン肉マン』（ゆでたまご）で」

−−あ、やっぱり。

「今までさんざん周りに薦めてきたんですけど、ちゃんと読んでない人けっこう多いんですよね。読もうとしたら最初で挫折したり」

−−ギャグ多めの序盤ですね。

「たしかに大人になってから読むとツッコミどころが多すぎて、そっちしか目につかないんですよ。笑い所探して読む、みたいな」

−−もう読んだことなくても「カナディアンマン（笑）」みたいな共通認識になってる所も多いですよね。長州力は知らないけど小力は知ってるみたいな。

「そうなんですよ。いらないところばっかり有名になっちゃってて。でも小学生なら何の疑問もなく入り込めると思うんですよ。前半もふつうのギャグマンガとして面白いですし、後半もむちゃくちゃですけど細かい理屈抜きでいいんですよ」

−−ツッコミ所を知る前に読んでほしいと。

「大人になって読むと正しい面白さがわからないんですよ！連載当時のような感覚で読むのが一番ですよね、細かいつじつまより」

−−勢い重視で！

「少年漫画の王道が詰まってますし。強さを数値化したり、敵が仲間になったり…。あとプロレスを見るきっかけになってほしいってのもちょっとありますね」

「やっぱり『ジョジョの奇妙な冒険』とか中学生あたりで読むべきだと思うんですけど、ああいうスタイリッシュなのじゃなくてこっちも読んでほしい！っていう。セリフとか四文字熟語とかすぐハマるんじゃないかと」

−−中学生とか絶対マネするよねえ。

「軍ぽさとか好きですよねえ。ギャグとして読む人もいると思うけど、良い事しか描いてないんで。正義とは、みたいな」

−−同じ王道だけど、キン肉マンとは真逆な感じしますね。正面から正しい主人公というか。

「あと散が悪役で一番好きなんですよねえ。罪子もヒロインとして一番好き。ただ守られるだけでなく、けなげに闘おうとしたり」

−−キャラも濃いし、これで正しい中２病にかかってほしいと。

「自意識過剰になりそうな時に何度も読み返していろんな名言を覚えて欲しいですね」

「タナカカツキの『オッス！トン子ちゃん』です」

−−お、ここまで王道・王道と来ただけに急に変化球が。

「自分が最初に読んだのは25か６くらいなんですけど、高校生くらいに読めば人生変わるかなあ、って思いますね」

−−同じ作者の『バカドリル』のイメージで読むと驚きますよね。

「恋愛マンガと見せかけて岡本太郎を啓蒙してくるような。最終的には美は美術館ばかりじゃなく水面のきらめきとかにもあるんだよ、とか。当時はけっこう衝撃でしたし。普通にガーン！と」

−−読んだ後何か変わりました？

「読んだあとは芸術に興味もちましたね、一瞬ですけど…。でも昔よりは関心持つようになったかな？」

−−ある意味感受性を試される作品ではありますよね。

「そうですねえ。でも読んだら視野を広げさせられる作品だと思います」