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フェティッシュの火曜日
 
子供に薦めたいマンガを聞いてみた

子供は勝手に読むもんだ

最後4人目はわたくしのライターとしての師匠でもあるフリーライターの安田理央さん。最近は駅弁達人としてもなぜかメディアに出てたりもしており、そして中学生と小学生の2児の父でもあります。この原稿、ここまで「何を子供に薦めたいか」という体で来ましたが、実際マンガ読み親子の現状はどんなもんなんでしょうか?


「あれ読めこれ読めって言ったことはなくって、本棚に置いてあるのを勝手に読んでるよね。成年コミックなんかは仕事場に置いてるから家にはないんだけど」

−−新旧マンガあるそうですけど、お子さんは古いのだとどの辺読みます?

「『あしたのジョー』(高森朝雄・ちばてつや)とか『がんばれ元気』(小山ゆう)、あと手塚治虫なんかはすげえ面白いって言ってるよね。あと『天才バカボン』とか『すすめパイレーツ』とかも読んでる」

−−ギャグって時代に左右されそうですけど関係ないんですねえ。

「そうだね。ただ吉田戦車が好きなんだけど『はまり道』とか読んで『ジョイメカファイト』とか古いファミコンソフトに憧れを持つのがイヤだね!」

−−ギャグの古さとかじゃなく、出てくるキーワードの古さが問題!

「ウチは古いマンガ多いから子供の知識が昭和になっちゃうんだよ」

−−そんな弊害があるんですねえ。

「あとイヤなのが、ウチは2人とも『酒のほそ道』(ラズウェル細木)と『BARレモン・ハート』(古谷三敏)が好きなんだよね。わかってるのかわかってないのか知らないけど、無駄な知識を覚えたりして。小学校の息子がテレビにマンハッタンが出てくると『マンハッタンといえばカクテルの女王だな』ってつぶやいたり。意味はわかってないんだけどね」


親子揃ってマンガ好き。もう結構多いと思いますが。

ちなみに安田家のお子さんは古いマンガしか読まされてるわけではなく、新しいマンガも読んでます。たとえば中学生の娘さんが好きなのは『SKET DANCE』(篠原健太)や『めだかボックス』(西尾維新・暁月あきら)あたりの少年ジャンプ系。父親から見ても「もう中学生にもなると自分で買って読んでるから全部はわからない」とのこと。

という感じなので「もう子供は全部読んでるんだけどね」と言いつつ挙げてもらった推薦図書、まず小学校低学年向けが『まんが道』(藤子不二雄)。


「いろんな意味でいいよね。歴史的なものもあるし、友情もあるし。あと大人になってから共同生活するあたりもグッと来る」

−−トキワ荘の暮らしですね。

「あとこれも好きなんだけど椎名誠の『哀愁の町に霧が降るのだ』なんかにも共同生活の話があるんだけど『皆で貧乏な暮らしをする』ってのに憧れたのよ。だから早くひとり暮らししたかったし」

−−どちらかというとマンガで成功、という立身出世物語の部分よりは男の日常生活的な部分に惹かれると。

「わびしい貧乏ではなく楽しい貧乏みたいなさ。貧乏でも楽しい、をこれで覚えてくと辛くないんじゃないかなあ。もう亡くなってる人も多いから、これでマンガの歴史を勉強っていうのはピンと来ないかもしれないけど」

−−もうご存命なのが藤子A先生とつのだじろう先生くらいですもんねえ。

「でもこれ読んでA先生の今のエッセイとか読むと遊んでばっかで楽しそうでいいなあって思うよ!ある意味繋がってる」


最近大物作家の内幕物多いですが、これぞ金字塔!

漫画家2人組マンガ、といえば今だったら『バクマン。』(大場つぐみ・小畑健)なんでしょうが、生活の部分に関してはこっちの方がリアルかつ楽しそうだもんなあ、たしかに。

続いて「小学校高学年〜中学生向け」で挙げていただいたのは『柔道部物語』(小林まこと)。


「スポーツは嫌いなんだけどスポーツマンガは好きなんだよね。その中でも完成度が高いのはこれかなあと。成長の物語としてもいいし、俺も柔道部だったんだけど描かれ方がリアル」

−−男が読む王道ですよねえ、スポーツは。

「同じスポーツマンガなら『キャプテン』(ちばあきお)も好きなんだけど、なんで監督がいないの?とか考えると非現実的で。そんな部活はないよねえ。その辺考えるとこっちの方がスポーツ漫画として優れてるのかなと」

−−ちなみにどこか子供にはこういう青春送ってほしいとかあります?体育会系な。

「うーん、自分がそうじゃないのに言うのはズルイんだけどね。自分はオタク寄りだったクセに体育会系のさわやかさをいいなって思っちゃう所はあるよね。自分を棚に上げてる感じだけど」

−−「やりたかないけど羨ましい」って部分は永遠にありますよね。

「スポ魂じゃない程度にスポーツはやってほしい気はあるけどね。中学生くらいまでに。高校でスポーツって大変じゃん。その前にやらないと一生やらないからね」


同じ作者なら『1・2の三四郎』もいいけど!

マンガの話というよりはスポーツの話に半分なってますが…。マンガ好きなら、特に男なら必ず手が出るスポーツマンガ。しかし、どんなにスポーツマンガ好きでも実際にスポーツする人はそんなにいない…。ならば息子だけでも!そんなジレンマ、たしかに感じそうだなあ。

そして高校生向けのおすすめ。これはもはや社会に出るためのステップボードなのかもしれない。


「高校生向け、って言っても子供どっちも読んでるんだけどさ。鈴木みそさんの『銭』って作品で。世の中の仕組みの話なんだよね。儲かる儲からないって話と現実は意外とぜんぜん違うって内容でさ。ひとつ勉強としてはいいんじゃないかな」

−−これで社会を学びましょうと。

「こういうこともあるよっていうのを高校生くらいなら知っててもいいんじゃないかな。『ナニワ金融道』でもいいんだけどさ、これはまた『ほう』って言いたくなるものがあるので」

−−王道ふたつ来て、ちょっとこういうので社会も知っておけよと。ある意味、斜め視的な。

「そうねえ。あんまりムリして子供の頃から斜め視させなくても、なる時はなるからねえ。大人が『これ読め』ってのじゃないものを読むのが子供でしょ?あんまり薦められるとイヤじゃない。うちも『これ読んだら?』って『おーい龍馬』渡すと読まないんだよ。(同じ作者の)『がんばれ元気』は読むのに。そういう事だから薦めないことにしてるんだけどね!」


まあ現実的に知って欲しい話ではあります。

4者4様で薦めてもらいましたが、唯一子供のいる安田さんから「あれば勝手に読むのが子供なんだから、『薦める本』っていう時点で子供いない人間の発想だよね」と言われたのが「そういえばそうだな」って思わされましたね。たしかにあれば読んでた!たとえば図書館にある学習マンガ、アレも別にむちゃくちゃ面白いもんじゃなくてもついつい読んでたもんな。

とはいえ一昔前と違い、親がマンガを読み、子供もマンガを読むというのがかなり当たり前になってきた現在。時には息抜きに、そしてまたある時には悩みを解きほぐす一助になるかもしれないのがマンガというもの。子供に大威張りで見せる必要はないけど、そっと傍らに置いておけるいくつかの偉大なマンガがあることはその家族にとって素晴らしいことだと思う。

皆さんも考えてみてクダサーイ。

考えてみると難しい

最後に、ではわたくしのおすすめを…という形で文章を締めるつもりでしたが、あらためて探してみると難しいな!特に小学生向けとかそんなに手元にないもの。あと「面白い」と「読ませたい」はまた違うというか。


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