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ロマンの木曜日
 
瀬戸内台場物語

海風吹きすさぶ、荒涼の松帆台場

たどり着いた松帆台場は、何とも史跡っぽくないというか、雰囲気が寂し気というか、まぁ、要するに、ただの荒地っぽい。

マンションに押され気味だったとはいえ、史跡としてそれなりに整備がなされていた舞子台場に対し、こちらの松帆台場は私有地そのもの、といった趣きだ。


海だか池だか分からない水辺に、奥へ続く道路が一本
その脇は、荒地というか、何かの廃墟というか

一体、どこに台場を見出せば良いのだろう

そもそも、本当にここが台場なのだろうか、そこから疑うべきな気もする。いや、文化庁の文化財データベースに記載されている地図が示している位置は、ここに違い無い。

台場の痕跡を探してみようと思ったものの、手前は廃墟風の荒地、奥は某企業の保養所と、どちらも明らかに公有地ではないっぽいので、下手に立ち入る事ができない。道路から、その周辺を見回すだけだ。


ひょっとして、この辺が台場の遺構?
ほらほら、石積みだし……って、違うかな。排水溝あるし

何という事だ。台場巡りの記事でありながら、肝心の台場の遺構を見つける事ができないとは。

先ほど心の隅で思った「記事にできないかもしれない」という思いが頭をもたげ、水面に浮き出てきつつある。こうなったら、……アレか?アレをやるしかないのか――?


また、アレをやるしかないのか?

 

そうだ、保養所に聞いてみよう

いや、まだだ。諦めるのはまだ早い。敷地の奥へと続く一本の道路、その先に建つ某企業の保養所に、事情を伺うという手が残されている。

台場のすぐ側(というか、台場の上?)にあるこの保養所の方ならば、何か松帆台場についてご存知かもしれない。


というワケで、失礼します
人の出入りに紛れてフロントへ

私はおずおずとフロントに向かうと、台場の遺構を探している旨を伝える。すると受付の方が「あら、それならそこのスロープを左に行ったすぐの所にあるわよ」とおっしゃる。

あぁ、何と言うことだ。目当てのものは、この保養所の敷地内にあったのだ。それでは、道路からでは分かるはずがない。

おばちゃんの横にいた支配人らしきジェントルマンに、「見学させていただいてもよろしいですか?」と訊ねてみると、「本当はダメなんですが……」と前置きした上で、「でも、折角来て頂いたのですから、特別に」という事で許可をいただけた。


その保養所の敷地内には、土塁と、石垣で築かれた火薬庫跡が存在した

土塁の上からは海の眺めがとても良い
対岸の舞子台場も見える(クリックで舞子台場の位置表示)

後日、改めてこの松帆台場について調べてみると、その史跡の範囲は保養所の敷地のみならず、最初にお見せした荒地風の土地や池(水面下に船着場跡があるそうだ)までにも及ぶ、広大なものであった。

ただ、現在は史跡として特に整備されているワケではなく、現地案内も皆無に等しいので(私有地だし、当然といえば当然か)、これ以上に無いくらいに分かり辛い史跡であった。それでもまぁ、ご好意で遺構を見る事ができたし、満足。


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