実を言うと今回の実験を行うにあたって、僕はこの魚に多大な期待を寄せていた。
というのは、ナマズは小魚や小動物を貪欲に食い漁るが、実はひどく目が悪く、獲物を探す際に水の振動を頼りにするという性質を持っているためだ。
つまり、スプーンの見た目がいくら生き物離れしていても、彼らならきっと泳ぐ気配だけを感じ取って生き物だと思い込み、食いついてくれるだろうと考えたのだ。
いざというときの安全パイ的な存在として期待をかけていたのである。
事実、釣りはじめて一時間と経たないうちに思惑通りに食いついてくれた。
逆に言えば、ナマズすら釣れないようなら今回の実験はどこへ行っても失敗に終わるだろうと考えられた。まあ池でブラックバスが釣れた時点でそういった心配は杞憂であることが証明されたのだが。 |