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土曜ワイド工場
 
打製石器で作る焼き鳥と刺身

打製石器でヒゲをそる

一番切れ味がいい刃物は何か?と聞かれて、大抵の人はカミソリを思い浮かべるだろう。
(日本刀は、そんなにいいわけではないらしい)

黒曜石も、カミソリとして使うことができれば、いよいよ本物だ。
実はこの実験のために、僕はあごヒゲを剃らずに伸ばしていたのだ。


3週間剃らなかったあごヒゲ。見苦しい写真ですいません。

「思春期かよ!」というぐらいにヒゲが薄い体質なんですが、これでも頑張って伸ばしました。 多少変化が分かりづらいと思いますが、少々石器ヒゲそりにお付き合い下さい。


泡塗って……

じょりじょりじょり……

いででででで!!

慣れない刃物を当てたせいか、めちゃくちゃ痛い。
ヒゲが剃れてるかどうか以前に、痛くて痛くて話にならない。
どうしたのか。
あごの状態をチェックする


血がにじんでるし、剃れてない。
でも指先をチェックしてみると、剃れてなくはない。

どうも剃れないことも無いらしい。
ちょっと当てる角度などを工夫しつつ、もうちょっと頑張ってみる。


ヒゲがふやけてくると、多少は剃れてくる。
完了。タオルの気持ちよさ、天国のよう。

ヒゲが薄いため、ふだん10秒で終わる僕のヒゲそりが、今日は5分ぐらいかかった。
人生最長のヒゲそりだ。
さて、あごのアフターを見てみると


剃れて……ますね!

多少、黒曜石を無理に当てたので、毛穴に血がにじんでいるが、総じて剃ることができている。
すごい。

僕はこれまで打製石器なんて、「刃物」からは程遠いものだと思っていたが、実際にはカミソリ級の切れ味だったのだ、打製石器。
古代人さん、今まで石器ナメてました。すんません。


黒曜石の持つポテンシャルは計り知れない。

だとすればあきらめかけた最後の関門もいけるんじゃないか。
最後の関門、それは石器を使った刺身作りである。

 

刺身作り with 黒曜石


買ってきたのはアジ。

ここまで使ってきて、だいぶ黒曜石には慣れてきた。どんな場所にどんな黒曜石を使ったらいいかも分かる。
魚から刺身を作るにあたり、3枚の黒曜石を用意した。


1枚目はこれ

もっとも刃に厚みがあり、刃こぼれしないので、思い切って力を入れることができる。
「出刃黒曜石」、と名付けたい。


2枚目はこれ。

刃は普通の厚さだが、ゆるく丸みを帯びており、一番汎用性の高い黒曜石だ。
「文化黒曜石」と名付けたい。


3枚目はこれ

刃は薄く、そして、長くまっすぐである。
ものを薄く切るのに適している。
「柳刃黒曜石」と名付けたい


出刃黒曜石で、硬いウロコも楽勝。

黒曜石の切れ味自体は、間違いなく包丁よりいいので、切れ味に悩むことは無い。
むしろ、手のひらにぴったり収まって、小回りが利く、という点では包丁より使いやすい。

そんな特徴もうまく活かせて、今までで一番うまく3枚におろせたんじゃないだろうか、というぐらいアジをきれいにおろすことができた。


文化黒曜石の丸みが骨の隙間にフィット。
柳刃黒曜石で、刺身に切り分けます。

できた! 打製石器で作ったアジの刺身!!

僕の料理の腕がそんなでも無いので、見た目が微妙だが、石器で作った刺身と思えば相当ましな部類に入るんじゃないだろうか。
さっきの鶏肉も焼き鳥にして、合わせて僕の夕ご飯とした。


成功だぜ! うまいぜ! 打製石器ディナー!

驚異の切れ味、黒曜石

最初は割ることさえままならなかった黒曜石だが、思ったよりもずっと手軽に、凄まじい切れ味のナイフを作ることができた。
驚異だった。
古代の世界において、その価値が非常に高かったというのもうなずける。

ちなみにこの黒曜石は、伊豆の神津島産のものなのだが、古代では「ブランド品」として、遠くは石川県にまで流通していたという。
おそらく、その切れ味ゆえ、大事に大事にされて、石川まで運ばれたのだろう。わかる。わかるぞ。
みたいに、その切れ味に21世紀の世の中で共感できることを、ほんわりと嬉しく思う、打製石器ディナーであった。

ネギを切るのは、少し苦手、黒曜石。

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