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ひらめきの月曜日
 
盆栽村で盆栽デビューを


緊張のなか、清香園さんへ

まったくの素人の自分が盆栽の職人さんに直に盆栽について教わるというのはさすがに緊張だ。ヤワな質問をして怒られやしないだろうか。ドキドキのまま「ごめんくださーい」と清香園さんの門をたたいた。

「あ、ニフティの方ですか?」
「え? あ、はい」
「今日は私が担当させていただきます。よろしくおねがいします」


担当して下さる山田聡子さん

どんな頑固そうな職人さんがお出ましになるかと思っていたら、喋りくちのとっても柔らかい美人が。なんだ、なんだ、これは中2の夢か。

「インテリアや雑貨が好きで、それも和のものが好きだったんです。洋よりも重みがあっていいと思っていて。そのジャンルの1つとして盆栽にも興味があって」

自らの盆栽への入り口をそう語る山田さんは、もともと清香園の主催する盆栽教室の生徒だったのだそう。以前は食品会社で営業をしていたそうだ。

清香園には若い従業員の方が多かったのだが、やはり生粋の盆栽好きの方もいた。山田さんの他にお会いした若い男性のお弟子さんは、なんでも高校のときから盆栽が好きでこの道に入ったという。昔は恥ずかしくてコッソリ隠れて松を育てていたというから本物だ。

 

お客さんはどんな人が

老若男女が訪れ、若い人も増えてはいるが、お客さんのコア層はやはり中高年だそうだ。そして噂通り外国人の方も多く訪れるという。

「外国人の方は寿司とか相撲と同じように日本文化の1つとして盆栽に興味を持っている人が多いみたいですね。盆栽村はガイドブックに載っているみたいです」


園の書籍コーナーには英語の盆栽本も

ただ、外国人の方は観るだけで盆栽は買わないんだそうだ。どうしてわざわざ外国から来たのに?
「あ、ほら、植物は検疫にひっかかるから」
なるほど。

盆栽には分類があり、これぞ盆栽といった松などを「松柏」といい、花の付くものを「花もの」、実のつくものを「実もの」花も実も付かない木を「雑木」と呼ぶ。

インテリアやガーデニングから流れてきた若い人や主婦の方々が実ものや花ものを好むのに対し、やっぱり外国の方はクラシックな松柏に興味を持つ人が多いらしい。気持はすごくよく分かる。


やっぱり外国の方にウケがいいのはクラシックな盆栽

「単純に日本らしいからっていうのもあるんでしょうけど、松などは寒くても栽培できるのでヨーロッパには合っているみたいです」

へえ。日本文化、もしかして輸出に合理的にできている?

 

盆栽鑑賞、その基本の基本

さて、そんな盆栽、ちょっとした見所を押さえることでグッと面白くなる。ルールを知るとスポーツの面白さ倍増の法則だ。園内をまわりながら山田さんにレクチャーしていただいた。

1,「正面」から観る

「これを押さえておくとだいぶ違うというのが正面、ですね。盆栽は床の間に飾るという前提があるので、裏と表があるんです。表のことを“正面”といって、盆栽は正面から鑑賞するように作られているんです」


角度を間違うと?な盆栽も 正面から見ると…、どーん

「正面は基本的に枝の先端がこちらに向かって倒れている方、おじぎしている方と考えると分かりやすいです。それから、葉がこんもりしている方でなくて、曲(きょく)と呼ばれる枝の曲がり具合を幹模様っていうんですが、これがよく見える方が正面になります」

なるほど。女優さんに得意の顔の向きがあるようなものか。

2,見上げる

「スケールの小さな中でいかに大木のように作るかというのが盆栽なんです。幹は上に向かってだんだん細く、枝は細かく、葉は小さく。大木の寸法どおりに忠実にミニチュア化するのがひとつの手腕です。その大木感を感じるには下から見上げるといいんです。自分が小さくなったつもりで」


普通に観るとミニチュア的だが 見上げてみると、おお、森の木のよう

しゃがんで下から仰いで見ると本当に森の木みたいに見える。じっと観ていると目が錯覚を起こして楽しい。
「これなんか、手に持てるサイズなのに大きな木みたいでしょう」
山田さんが手に取ったミニ盆栽は本物の木なのに逆にジオラマで使う作り物の木みたい。


こっち、盆栽 こっち、普通の大きな木

さらに実ものや花ものは、ミニチュアサイズの木に実寸の実や花がつくのでバランスが絶妙。松柏は木の皮の模様が実際の木よりもダイナミックに見える。


異様に大きな実が成っているように見える 木の肌のゴツゴツが露骨

「大木に見せるのと関係してくると思うんですが、根がしっかり土台に張っているものは高く評価されます。“根張りがいいねえ”なんていうとツウっぽいですね」


おっ、こいつは根張りがいいねえ

レクチャー始まって20分も経たないうちにツウぶれるイディオムゲットだ。さて、盆栽鑑賞基本の基本、最後のポイントはその情感をくみ取るコツです。


 

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