いざ実臭
こうして今僕の手元にはいくつかのにおいの入った袋が集まっている。それぞれに区別がつくよう採取日と場所のメモを添付してある。
これからいよいよ嗅ぐわけだ。
まずは花屋で採取したユリ周辺のにおいだ。大きく息を吐き、一気に吸い込む。
・・・(花!)
かすかだが、確かに花のにおいがした。目を閉じると遠いところに花畑が浮かぶ。やった、成功だ。花のにおいは持ち帰ることができる。
あれ
調子に乗って次々とにおいを嗅いでいく。パン屋、ハンバーガーショップ、海。
・・・(?)
だめだ、目を閉じてもイメージが沸いてこない。要するににおわないのだ。海の潮の香りは採取段階で無理かな、と思っていたが、あんなに強烈にいいにおいのしたパン屋やハンバーガー屋のにおいがまったく持ち帰られていないとはどういうことだ。
ではさんまはどうだ。
・・・(炭?)
なんというか、炭のにおいがした。しかし奥深く、本当に片隅にほのかに生くさい魚のにおいが感じられた気もする。だけどあのとき感じた圧倒的ないいにおいはその影を潜めてしまっていた。
補導されそうです
お気づきの方もいるかもしれないが、このにおい検証は安藤珈琲店で行っている。うちの店は窓越しに店内が見渡せるのだが、試しに外からどう見えるのか撮影してみた。
どう見てもアンパン少年だ。
前の道をパトカーとか通らなくてよかったと思う。
種類によるのかもしれません
採取してからの経過時間も影響するのかもしれないが、食べ物のいいにおいは持ち帰ることが難しいということがわかった。
それではあのにおいはどうか。