:石川「サボテンが見つかってプレッシャーです。」
:安藤「でしょう。石川さんはどこ行ってきました?」
:石川「秩父です!でもすみません、最初に言っておきますが目的のものは見つかりませんでした。でも道中がとにかく怖かったから見てください。」
:安藤「大丈夫です、今回の目的は見つけることじゃなくて誰も見にいかないところへあえて行くことなので。では石川さん、お願いします。」
お金では買えないものもある、ネットでは知れない知識もある
秩父ファミリーパーク。もうなくなったとはいえ、観光地だしネットで調べりゃいくらでも情報出てくるだろ。
そう、高をくくっていたのが全ての間違いの元であった。
このあたりに昭和40年代に開園、閉園となったアミューズメント施設がありました。今は廃墟としてわずかな面影があると思います。どなたか写真をお願いします。
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ここに至るまでの車中、スマートフォンで場所を調べながら来た。依頼にはだいたいの場所しか載っていないため、正確な場所は自分で調べる必要があったのだ。
あやふやな情報ではあるが、他にヒントがない以上そこに行くしかない。時間が遅かったため、秩父ミューズパークへの通常の交通手段であるシャトルバスはもう終了。代替のルートを検索したところ…。
まあ、取材してたらちょくちょく歩くことになる距離だ。気になるのは、すでに日が暮れ始めていることだが…。
証人:濃密おじさん登場
ところで、西武秩父の駅前には観光案内所がある。観光案内所は地元に詳しい年配のスタッフの方がいることが多く、キキコミ調査先としては最有力である。 営業時間ギリギリだったが、飛び込みで聞いてみた。
「秩父ファミリーパークっていうのが昔あったと聞いたのですが」との質問に、カウンターにいた若い二人は知らず、代わりに奥からおじさんが一人出てきた。 「それ、俺のデートスポットだよ!」の声とともに。
話をきいてみると、 ・昭和40年代にできて、数年でなくなってしまった。 ・当時の新聞の埼玉版なら情報があるかも。 ・西部鉄道が作った施設だが、いまや隠したい過去なのではないか。 ・無くなった理由は、当時のリゾート開発のはしりみたいなものだったから…ここまで言えばあとはわかるよね?
「あとはわかるよね?」のあとは僕にはわからなかったのだが、これ以上は食い下がっても口を濁すばかりだったので、深追いしないことにした。まあ、今回の趣旨とは関係のない話だ。
それより、「現地の様子を知りたがっている人がいるのだ」と伝えたところ目の色が変わり、「まさか女の人じゃないだろうな!」と言いながら当時を回想、ニヤニヤと笑みを浮かべ始めるおじさん。現地にはほろ苦いどころではない、相当に濃密な思い出があるようだ。 (この段落は、おじさんに「あとでレポートを書くのだ」と言ったらこう書けと指示された内容をそのまま書きました)
ちなみに、当初あたりをつけていた秩父ミューズパークとは少しずれた場所にあるらしい。「数年でなくなってしまった」というのがポイントで、だから知名度も低く、ネットにも全然情報が出てないのだろう。
田舎道を歩く
ここでも時間の遅さがあだとなった。次の電車、最寄り駅のひとつ手前で止ってしまうのだ。その次を待つ猶予もない。こうして一駅余分に歩く羽目に…。
意外に平らな道のりでよかった。ファミリーパークというくらいだから山奥にあるキャンプ場のようなものを想像していて、道中は当然山道だと思っていた。不幸中の幸いである。
あとはひたすら歩くのみ。1時間ほどの道のりである。時刻はただいま7時前。日没との戦いだ。
東京では聞いたことがないタイプの鳥やカエルの声がする。民芸品店でよく売ってる蛙の声がするおもちゃ、僕は「蛙の声に全然似てないじゃん」と思っていたのだが、道中にはあれそっくりの声で鳴くカエルがいた。ここにいたのか!
こんな夕方の田舎道を、カメラ抱えた部外者がウロウロしていてさぞかし不審ではないか。そんな心配をしていたのだが、どうやらここは巡礼コースになっているらしく、巡礼者向けの碑があちこちに建っていた。おかげでそんなに不審がられなかったと思う。(そう思いたい。)
山、墓場、野犬
ここまでは犬の散歩をする人がいたり女子中学生が道ばたでおしゃべりしていたりと生活の気配があったのだが、この寺を通り過ぎたあたりで、人通りがぱったりと途絶えた。道は上り坂となり、周りの木が急激に茂りはじめる。道が、山に入ったのだ。
蚊の舞うウンウンという音が耳の周りにまとわりつく。視界はだんだん足下すらもおぼつかなくなってくる。ちょっと緊張してきた。
道中、急にものすごい勢いで複数の犬に吠えられ、野犬の襲撃かと思い思わず死を覚悟した。しかし直後にチャリンと鎖の音。暗がりで気づかなかったのだが、よく見ると道の脇に民家があり、そこの飼い犬であった。ちゃんとつながれていてよかった…。 緊張が弱気に変わった瞬間である。
一歩一歩、確実に近づいてはいる。ただ、地図を見ても山道は目印となる建物がなく、あとどのくらい歩けばいいのか見当もつかない。
広かった道も次第に狭くなり、ついに人一人歩くのにぴったりくらいの道幅になってきた。気がつくと日は完全に落ち、街頭もないこのあたりでは周囲を照らすのは薄曇りの弱い月明かりのみ。そしてしばらく歩くと、前方に完全な暗闇が現れる。これまでよりいっそう木の茂った山道、月の光も完全に遮られてしまっているのだ。ここ、行くのか…。
これ以上は暗いし怖いし、万が一道に迷ったら復帰は絶望的である。ここは深追いはやめて、おとなしく引き下がろう。これは逃げではない、戦術的撤退である…。
車で行こう
しばらく戻ったところで犬の散歩をしている女性がいたのでキキコミしてみたところ、 ・ファミリーパークは確かにあった。 ・たしか火災があって無くなったはず ・ここから歩いて1時間くらいかかる。夜は暗いのでムリだと思う ・看板など、形跡が残っているかはわからない とのこと。まだ1時間もかかるのか…。ムリして歩かなくて本当によかった!
なお観光案内所のおじさんの話では、車で行けばすぐとのこと。狭い山道は途中で降りて歩く必要があると思うけど、舗装はされてたのでそんなにハードじゃないです。明るければね…。