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土曜ワイド工場
■上野の切妻タイプの作り方
自然の恵みをそのままに
上野の切妻タイプは公園ならではの生い茂る木々を利用した作風だ。2本の木々の間にロープ、またはポールを張り渡し、それをいわば切妻の頂点の梁として、そこからブルーシートを下に流し広げていく作り方。上の写真では右の物件が非常にわかりやすい。切妻というよりはテントに近いけど。下は石で押さえて出来上がり。簡単だ。
内容物がこんにちは
左などは上野タイプの典型とも言えるものだ。内部に構造体を持たずに、張り渡したロープにすべてを任せた非常に簡単なDIYハウス。こういうタイプは隅田川沿いではありえない。こういう好感が持てるずぼらなDIYハウスは上野でしか生き残っていけないのだ。
なぜ上野では大きなDIYハウスが多いのか。その理由がこの作り方にある。つまり、ハウスの大きさは2本の木の間隔でおおよそ決まってしまうのだ。公園内の木立となれば木々はそれほど鬱そうとは生えてはいない。おのずとDIYハウスも大きくなるという寸法。
■箱型タイプの特徴とその造形の理由
さて、一方の隅田川箱型タイプ。
箱型タイプがなぜ箱型なのかがよくわかるかもしれない例
左のものは箱型タイプがなぜ箱型なのかがよくわかりそうなもの。これに限らず、前述したように隅田川沿いの箱型タイプは一般的にコンパクトできちっとした物件が多い。なぜなのか
隅田川沿いのきっちりコンパクト箱型タイプ。周りの家財道具に注目
隅田川のDIYハウス群を見ていると、上野のものと違って家財道具がハウスの外に置かれている様子が目立つ。上野の大きなハウスでは中に収められるものも、隅田川のコンパクトなハウスではそうもできないということだ。
最近はホームレスの方々も身なりがとてもきれいで、服装をちょっと見ただけではラフな格好をした普通のおじさんと見分けがつかない。それでもすぐに見分ける方法がある。それはなにか。大きな荷物を常に持ち歩いているのが彼らだ。
前ページでも書いたが、社会で起こることはホームレスの社会でも起こる。どんなにDIYハウスを頑丈に作っても普通の住宅にかなわないのは侵入者に対する耐性だ。かれらは常に盗られては困る家財道具を持ち歩いている。
つまり、隅田川のコンパクトなDIYハウスは「それで十分だから」小さくなっているわけではない。ハウスの中に置いておいても安心できないとはいえ、家財道具が外に置かれてしまうのと中にあるのとでは大違いだ。ではなぜそういうリスクを冒してまで家をコンパクトにするのか。
撤去後、再建中のDIYハウス
さんざんひっぱったが、実は、隅田川沿いのここは定期的に大掛かりな撤去・清掃作業が行われる。そのため、DIYハウスの住民の方々は前日から準備を始め、清掃当日にはハウス、家財道具ともに近くの公園などに一時退避する。つまり、彼らのハウスは頻繁な撤去・再建のために最適化された設計になっており、簡単にバラしてまた組み立てができるようになっているのだ。だからハウスの構造は単純な形態でかつコンパクトなつくりになっているのだ。
そしてもうひとつ、ここ隅田川では大きな「撤去」が年に一度行われる。
それは、隅田川花火大会
東京で一番歴史と伝統を感じさせる花火大会、隅田川花火大会。ふだんはハウスの住民と、犬の散歩やジョギングの方が時折通る以外人気のない隅田川護岸も、当日は人であふれる。大会の1週間前から当局による撤去が行われ、期間中DIYハウスの住民の方々は定期清掃と同じように付近の公園などへ一時住処を変える。
取材を始めるまではその立地特有の環境によってこんなにDIYハウスのカタチが収斂していくものだとは思わなかった。隅田川護岸の住民の方々の撤去・再建のご苦労は大変なものだと思うが、定期的になくなってまたすぐに戻る、こんな住居ってなんかとても不思議だ。今後機会があれば他の都市のDIYハウスも調べてみたいと思う。
日本では着るものと食べるものを手に入れるのはそう難しいことではない。しかし、家を持つのはとても難しい。ぼくら日本人は当たり前だと思っているが、世界中見渡すとこんなにも家を買うのが大変な国は珍しい。今回取材してみると、ホームレスの方々は予想よりはるかに「物」を持っている。食べ物だってぼくが思っていたよりずっとまともで驚いた。そういう「衣・食」とDIYハウスとのギャップはとても奇妙だ。これは日本ならではの光景ではないかと思う。
さて、本文では触れなかったが、DIYハウスの重要な建築素材であるブルーシート。これを彼らはどこで手に入れるのか?まさか購入するわけではあるまい?答えは、上野写真。花見客が置いていくシートを使っているのだとか。そういえば隅田川も上野公園も花見の名所だ。
*本文中、花見の写真は
「東京発フリー写真素材集」
、花火の写真は
「J's Photo Gallery」
のものを利用させていただきました。両サイトとも著作権表示しなくてもよいとのことでしたが、ここに敬意を表してリンクさせていただきます。
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